建物の安全を守るために欠かせない消防設備ですが、甲種4類はどういった設備が対象となるのかご存知でしょうか?
新設工事だけでなく、建物の一部を改修する場合も資格が必要となる中、乙種と甲種にわかれている理由を知らない人もいると思います。
そのため、今回は、資格としての違いや取得時のメリットなどを踏まえて紹介します。
消防設備士甲種4類とは?
消防設備士甲種4類に該当する仕事や対象となる設備、現状といった概要を説明します。
概要
建物に必要な消防用設備の工事やメンテナンスをするためには消防設備士の資格が必要です。
その中でも火災報知設備を扱えるのが消防設備士の4類であり、甲種だと点検やメンテナンスだけでなく工事も認められます。
令和元年の総務省消防庁による「消防白書」によると消防設備士の数は120万人で、その内の甲種4類の資格取得者は30万人ほどであり、今後も需要が見込まれる職業です。
仕事内容
消防設備士甲種4類の扱う火災報知設備とは、自動火災報知設備やガス漏れ火災警報設備といったものが該当します。
それらの工事やメンテナンスをするのが消防設備士の甲種4類の仕事であり、新しい建物や古くなった建物のリフォームやリノベーション時における火災報知設備の設置などができます。
また、ホテルや病院、学校やマンションには共同住宅用自動火災報知設備や特定小規模施設用自動火災報知設備などが設置されています。
それらは1年に2回、定期点検が必要となり、消防設備士の業務の一つです。
消防設備士甲種と乙種の違いについて
消防設備士の乙種は点検やメンテナンスだけしか行えませんが、甲種だと工事も対応可能です。
つまり、甲種の方が仕事のできる幅が広がる分、資格取得の難易度も高くなりますので、資格取得時には試験についての違いも理解しておきましょう。
試験の違い
甲種と乙種の試験科目や問題数の違いは以下の通りです。甲種は試験範囲が広く、実技試験の数も多いことがわかります。
種類 | 試験科目 | 類別 | ||||||||
特類 | 第1類 | 第2類 | 第3類 | 第4類 | 第5類 | 第6類 | 第7類 | |||
甲種 | 筆記 | 工事設備対象設備等の構造・機能・ 工事・設備 |
15 | |||||||
火災及び防火 | 15 | |||||||||
消防関係法令 | 15 | 15 | ||||||||
基礎的知識 | 20 | |||||||||
消防用設備等の構造・機能・工事・ 整備 |
20 | |||||||||
計 | 45 | 45 | ||||||||
実技 | 7 | |||||||||
乙種 | 筆記 | 消防関係法令 | 10 | |||||||
基礎的知識 | 5 | |||||||||
構造・機能・整備 | 15 | |||||||||
計 | 30 | |||||||||
実技 | 5 |
引用)受験案内|一般財団法人消防試験研究センター
https://www.shoubo-shiken.or.jp/shoubou/subject.html
試験のその他の違いとして甲種の受験費用は5,700円で、乙種は3,800円であり、乙種の方が毎年受験者数や合格者数が多いということが挙げられます。
消防設備士甲種4類を取得するメリット3つ
消防設備士の試験は一般財団法人消防試験研究センターが実施し、昭和60年度から開催している歴史ある試験です。
その中でも甲種4類の資格を得た際のメリットを具体的に紹介します。
転職時に有利
消防設備士甲種4類があることで、消防設備のメンテナンスだけでなく工事をすることも認められます。
そのため、メンテナンスだけでなく工事を請け負う会社への転職時に有利になるのがメリットです。
また、消防設備士の経験があって資格無しの場合は月35万、資格があると月45万のスタートとなる場合もありますので、高収入を狙う方は消防設備士の資格がある方が良いでしょう。
社内の評価が上がる
会社によっては消防設備士甲種4類の資格手当を月に8,000~10,000円プラスする場合があります。
年収アップへ繋がるだけでなく、資格取得への意欲を買われて社内での評価が上がる可能性があるのもメリットです。
意欲向上
甲種4類の勉強を経て、1類など他の資格への興味が出てくるというメリットもあります。
資格が取れると自信にもつながり、より知識を深めて学びたいという意欲が出てきます。
例えば7類は消火器などの設備に関わる資格であり、4類と共に取得することで任される業務も増えて仕事に対するモチベーションが向上します。
他にも1〜3類までは消火に関わる設備が範囲ですので、火災報知設備と共に学んで知見が広がったという例もあります。
消防設備士の試験内容について
消防設備士甲種4類を取得するにあたり必要な受験資格や試験の内容・難易度についての説明と、おすすめの参考書を紹介します。
消防設備士は消防用設備・特殊消防用設備等の工事やメンテナンスに関する新しい知識や技能の習得のため、一定の期間内に都道府県知事が開催する講習を受ける必要があります。
そのため、定期的に参考書を見直して学習を継続するということを意識しておく方が良いでしょう。
受験資格
乙種4類の受験資格はありませんが、甲種4類には以下の受験資格が必要です。
受験時には各資格の取得または特定の実務経験年数があるか確認する必要があります。
- 甲種消防設備士
- 乙種消防設備士と2年以上の経験
- 技術士
- 電気工事士
- 電気主任技術者(1~3種)
- 消防用設備等の工事の補助の5年の経験
- 規定の専門学校卒業程度検定試験の合格者
- 管工事施工管理技士
- 工業高校の教員等
- 無線従事者
- 建築士(1・2級)
- 配管技能士(1・2級)
- ガス主任技術者
- 給水装置工事主任技術者
- 旧給水責任技術者
- 消防行政に関わる3年の実務経験
- 消防設備等に関わる3年の実務経験
- 旧消防設備士
上記の他、学歴による証明でも認められる場合があります。学歴の証明には卒業証書や単位習得証明書が必要です。
参考)受験資格|一般財団法人消防試験研究センター https://www.shoubo-shiken.or.jp/shoubou/qualified01.html
試験内容
甲種4類の試験は消防設備士の業務や消防法、火災報知設備に関する正しい知識が問われ、3時間15分で筆記と実技試験の設問を解いていく形式になっています。
筆記試験は4つの回答から正解を選ぶマークシート方式で、3科目で合計45問出題されます。
各科目4割以上と、全体の6割以上の正解で合格となります。
実技試験は製図などが7問出題され、合格基準は6割以上の正解です。
製図では建物などの図面に配線や必要機器を配置していくような問題が出されます。
試験日程
消防設備士甲種4類の試験は各都道府県によって開催日と年に何回開催されるかが変わります。
東京都だと1~2か月に1回、その他の都道府県だと年に2回です。
試験難易度
消防設備士甲種4類の令和3年度の合格率は43.4%でした。
筆記試験は3科目から出題されるため、まんべんなく学習する必要があります。
実技試験は普段から手を動かして図面を見ることが無いと不慣れで難しく感じる人も少なくありません。
そのため、練習問題を解いたり時間内に解答できるようにすることで試験を乗り切れるでしょう。
おすすめの参考書
消防設備士甲種4類の勉強をするにあたり、まずは参考書でどういった内容の学習をすべきか把握する必要があります。
全体像を一通り確認して問題集を解き、躓いた部分を学習し直すのがおすすめです。
「わかりやすい! 第4類消防設備士試験」
消防設備士の試験を受けたことが無い方におすすめなのが「わかりやすい! 第4類消防設備士試験」です。
消防関係法令を学ぼうとすると、難しい法律の文章に苦手意識を持つ人も多いため、初めて学習する場合でも理解しやすい参考書が良いでしょう。
「本試験によく出る!第4類消防設備士問題集」
試験用の問題集でおすすめなのは「本試験によく出る!第4類消防設備士問題集」です。
問題集によっては過去問題を網羅するタイプもありますが、毎年出題される問題から理解していく方が効率的です。
一冊を一通り解いていき、解答を間違えた問題文があった場合は参考書に戻って学習を深めていきましょう。
「消防設備士 4類 超速マスター」
勉強時間があまり確保できない場合は「消防設備士 4類 超速マスター」がおすすめです。
試験に関する内容の解説が厳選されており、短期間で学べるように構成されています。
毎日まとまった時間が確保できない場合は、昼休みに少し参考書を開くという習慣を付けるのも良いでしょう。
まとめ
建物に欠かせない消防設備ですが、古くなった建物の改修に伴う新規設備の設置や、定期的な点検が義務付けられていることから今後も需要がある仕事です。
また、建物の利用者が安心して使用できるようにするために仕事に誇りを持って取り組むことができるのも特徴です。
資格があるとメリットも多いことから、まずは乙種の試験を受けて問題の傾向を掴んでから甲種を受ける人も少なくありません。
そうした理由から4類取得を目指して学習を始めてみてはいかがでしょうか。
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