構造設計一級建築士とは?メリットや取得までの流れ、難易度について解説!

構造設計一級建築士は毎年、千人ほどが講習を受けて数百人が修了する資格です。
修了者数の累計は令和3年1月13日現在、10,867名であり、今後も大規模な建築物には欠かせない資格です。
今回は構造設計一級建築士を取得するまでの流れやメリットなどを紹介します。

構造設計一級建築士とは

構造設計一級建築士制度は平成18年の改正建築士法により創設されました。
これにより、一定規模以上の建築物における構造設計には以下の内容が義務付けられました。


引用)構造設計一級建築士制度について.indd https://www.mlit.go.jp/common/001185128.pdf

  • 構造設計一級建築士が自ら設計をする
  • 構造設計一級建築士に構造関係規定への適合性の確認を受ける

上記を踏まえず建築基準法に定める建築確認申請をした場合、建築確認申請書は受理されません。
そのため、公益財団法人建築技術教育普及センターが実施する講習を修了した構造設計一級建築士が必要になります。

構造設計一級建築士になるためには

構造設計一級建築士になるには、まず規定の講習の受講資格があるかを確認し、講習を受けてから修了考査を経る必要があります。

その後、公益社団法人日本建築士会連合会が交付手続き等を行っているので、講習の受講修了者は修了考査の日より1年以内に住まいの都道府県の建築士会に構造設計一級建築士の交付申請をします。
構造設計一級建築士証交付申請の費用は14,300円、再交付申請の場合は5,900円です。

試験(講習)概要

公益財団法人建築技術教育普及センターは国土交通大臣の登録を受けた登録講習機関であり、構造設計一級建築士講習を実施しています。
実施についてですが、2021年の試験は9月13日~10月8日のうち、連日2日間の会場で講習を受講するか、配信動画による受講が求められました。
その後、修了考査が一日あります。

受験資格

構造設計一級建築士の資格取得のための受講資格として、一級建築士における5年以上の構造設計の業務経験が必要です。
また、構造に関する工事監理の業務や審査、構造計算適合性判定の業務経験も求められます。
なお、業務経験として認められないものとして、構造以外の設計や工事監理、積算、施工管理といった業務が挙げられますので注意しましょう。
上記を踏まえた上で、受講資格の証明として第三者による業務経歴証明書が必要になるため、あらかじめ確認しておく方がおすすめです。

講習・修了考査内容

受講の申込区分は以下のⅠ~Ⅲにわかれています。

区分 内容 受講手数料
申込区分Ⅰ 全科目 55,000円
申込区分Ⅱ 法適合確認のみ 44,000円
申込区分Ⅲ 構造設計のみ 49,500円

申込区分Ⅰは、一級建築士が対象です。

申込区分Ⅱは、前年度までに実施された構造設計一級建築士講習の修了考査において「構造設計」に合格しており、講義か修了考査のうち「構造設計」に対応する「建築物の構造に関する科目」の免除を希望する場合の申込区分です。

申込区分Ⅲは、前年度までに実施された構造設計一級建築士講習の修了考査において「法適合確認」に合格しており、講義か修了考査のうち「法適合確認」に対応する「構造関係規定に関する科目」の免除を希望する場合の申込区分です。
つまり、合格している方は次年度に再度、受講する必要はありません。

1)構造設計一級建築士の関与が必要とされる建物

構造設計一級建築士の関与が義務付けられているRC・SRC造の建築物は、下図の黄色や灰色でマークされた建物条件が該当します。


引用)「構造法規審査研究会 Ver.210527」関与の要否一覧表(pdf用).xls https://www.city.chofu.tokyo.jp/www/contents/1182825155833/files/checklist3-p.pdf

他にも以下のような条件が当てはまります。

  • 高さ13メートルまたは軒高が9メートルを超える木造や鉄骨造の建築物
  • 延べ床面積3,000平米以上の鉄骨造の建築物(300㎡以上でも一定の基準に該当する場合は必要)

2)構造設計一級建築士の資格

受講資格は「一級建築士における5年以上の構造設計の業務経験であり、構造に関する工事監理の業務や審査、構造計算適合性判定の業務経験も求められます。

3)講習内容

2021年の講習構成と申込区分別の免除などは下図の通りです。

引用)「令和 3 年度構造設計一級建築士講習のご案内」
https://www.jaeic.or.jp/koshuannai/koshu/s1k/s1k-koshujisshijoho.files/pamphlet_s1_r030902.pdf

2日間の講義では昼休みを挟んで学習時間が設けられています。
内容は構造設計総論、構造関係法令及び法適合確認、構造設計の基礎、耐震診断・耐震補強、構造設計各論があり、受講後は修了考査を受ける必要があります。

4)修了考査の内容

修了考査は全国一斉で実施されます。
出題内容は「構造設計一級建築士として必要な知識及び技能に関するもの」となっており、2つの区分に分けて3時間ずつの考査時間になっています。

令和2年度の考査問題では、法適合確認(構造関係規定に関する科目)は記述式問題が5問、構造設計(建築物の構造に関する科目)は4肢択一式が20問と記述式が3問でした。
令和3年度の考査問題では、法適合確認と構造設計がそれぞれ4肢択一式が10問と記述式が3問の合計26問でした。
上記のうち、記述式問題は一定の採点基準が設けられた上で合否判定の評価がされます。

法適合確認の内容は構造関係規定上不適切な部分を有する設計図書を提示し不適切な箇所及びその理由を指摘する問題や、基礎的な知識などが問われます。
構造設計の内容は、計画条件を与えた上で壁量計算・剛性評価・モデル化・座屈・変形能力に関する知識が問われ、構造計画、構造計算等の総論、木造・鉄筋コンクリート造・鉄骨造・鉄骨鉄筋コンクリート造等の各種建築構造の特性に関する出題があります。

構造設計一級建築士の難易度(過去の合格率)

過去5年間における申込区分別の受講者数と修了者数、修了率は以下の通りです。
3人に一人は修了しているという傾向がありますが、決して簡単ではないと言えるでしょう。

受講者数 修了者数 修了率
平成28年 828 199 24.0%
平成29年 794 216 27.2%
平成30年 831 336 40.4%
令和元年 771 217 28.1%
令和2年 790 285 36.1%

参考)構造設計一級建築士講習データ 建築技術教育普及センターホームページ https://www.jaeic.or.jp/koshuannai/koshu/s1k/s1k-data.html

メリットとデメリット


構造設計一級建築士は、大きな建築規模の設計に携われることからやりがいに繋がり、スーパーゼネコンなどの企業からの需要があるのがメリットです。
また、企業によっては受講料を負担してくれる場合や、構造設計一級建築士の資格手当として2万円を毎月加算する場合などがあるため、早めの取得を視野に入れる方が良いと言えるでしょう。

デメリットとして構造設計一級建築士の受験から交付までの費用が高いことが挙げられます。
申込区分Ⅰの講習を受講する際は54,000円と、交付手数料が14,300円となり、合計7万円近い出費となります。
講習時間や修了考査対策用の勉強時間なども含め、受講できるかどうか検討する必要があります。

構造設計一級建築士の転職先


スーパーゼネコンはRC造やS造などが複合していて高度な構造設計が必要となる建築物や、高さ60mを超えるオフィスビルなどの建築物など大規模な計画・施工を担います。
そうしたスーパーゼネコンと協力関係がある設計事務所も基本設計から詳細設計などを担うことから構造設計一級建築士は欠かせません。
つまり、構造設計一級建築士は大きな建築物の設計に必要であることから、スーパーゼネコンや大手設計事務所の需要があります。
中小企業からステップアップして転職できるという可能性があると言えるでしょう。

まとめ


構造設計一級建築士を取得するにあたり、修了考査の内容が年ごとに異なる場合があることから、内容をしっかりと理解しておく必要があります。
また、記述式の回答は手を動かしてみると意外に言葉が出なくなることもあるので練習が必要になります。
構造設計一級建築士証の交付を受けた後も、登録講習機関が行う「構造設計一級建築士定期講習」を3年ごとに受講しなければなりません。
常に学ぶ姿勢を持って、責任ある職務を全うしていく資格だと言えるでしょう。

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