施工管理の残業時間は長い?他業種との比較等から実態を詳しく解説!転職で残業を減らした事例もご紹介します。

建設工事において欠かせない施工管理ですが、残業が多かったり休日出勤もあったりすることからブラックだと言われることも少なくありません。

高齢化や現場の需要が多いこともあって人手不足と言われていますが、実態はどうなっているのか、具体的に見ていきましょう。

施工管理の残業時間の実態

労働基準法における労働時間の上限は1日8時間、1週間に40時間であり、36協定が結ばれている場合は1ヶ月に45時間、1年間で360時間を上限に時間外労働が可能です。

そうした中で施工管理は他業種と比べてどういった実態があるのでしょうか。
施工管理の種別や他業との比較など、データをもとに解説していきます。

施工管理の種類別

日本建設産業職員労働組合協議会が2020年11月に実施した「日建協時短アンケート」の結果を元に、施工管理の外勤と内勤、建築と土木といった種類別に残業時間を比較します。

過去3年分の月の残業時間(所定外労働時間)をまとめたのが以下の表です。
赤い欄が残業時間が多いことを表しますが、外勤となる施工管理が圧倒的に残業時間が多いことが分かります。

また、工期が迫っていたり、施工管理者が不足している現場だと月に100時間の残業となる人も一定数いるのが現状です。

平成30年 令和元年 令和2年 平均
外勤 建築 66.6 61.7 57.9 62.1
外勤 土木 63.6 59.5 56.5 59.9
外勤 事務 45.2 36.2 34.5 38.6
内勤 建築 34.0 30.6 31 31.9
内勤 土木 31.8 29.4 29.2 30.1
内勤 事務 16.8 16.4 15.7 16.3

※単位:時間

次に月の就業時間を業種ごとに比較していきます。

他業種との比較

厚生労働省の労働統計要覧の「産業別月間実労働時間数」における所定内労働時間と所定外労働時間の合計は以下の通りです。

建設業が他業種に比べて多く、一般労働者の平均労働時間である160時間よりも12時間も多くなっています。

  平成28年 平成29年 平成30年 令和元年 令和2年 平均
建設業 175.1 173.4 173.0 170.7 168.6 172.2
鉱業,採石業,砂利採取業 164.9 163.6 165.3 163.9 159.7 163.5
製造業 164.5 165.1 165.1 162.0 155.8 162.5
電気・ガス・熱供給・水道業 157.5 156.9 157.2 154.4 156.4 156.5
情報通信業 160.5 159.5 156.4 154.9 156.2 157.5
運輸業,郵便業 169.7 172.0 167.2 164.0 157.7 166.1
卸売業,小売業 137.5 137.4 136.7 134.3 133.0 135.8
金融業,保険業 149.1 148.5 147.6 145.9 146.3 147.5
不動産業,物品賃貸業 146.9 147.7 147.0 144.2 140.7 145.3
学術研究,専門・技術サービス業 156.4 156.3 156.8 155.4 153.8 155.7
宿泊業,飲食サービス業 112.3 109.9 108.7 103.7 88.8 104.7
生活関連サービス業,娯楽業 131.4 129.4 128.7 121.9 105.8 123.4
教育,学習支援業 127.5 127.0 128.2 126.1 123.6 126.5
医療,福祉 143.1 143.6 143.6 140.6 139.0 142.0
複合サービス事業 155.8 155.6 153.6 149.4 149.4 152.8
サービス業 140.9 139.7 139.7 136.8 132.5 137.9

※単位:時間

次に業種別の「産業別月間出勤日数」は以下の通りで、平均よりも出勤数が多いことが分かります。

上記の表と合わせてみると、施工管理者が土日祝日も出勤していることや、休憩時間を引いた実働時間がそもそも多いという現状も伺えます。

  平成28年 平成29年 平成30年 令和元年 令和2年 平均
建設業 20.5 20.4 20.3 19.9 19.8 20.2
鉱業,採石業,砂利採取業 20.5 20.4 20.1 19.8 19.7 20.1
製造業 19.3 19.3 19.3 19.0 18.6 19.1
電気・ガス・熱供給・水道業 18.8 18.9 18.7 18.4 18.4 18.6
情報通信業 19.0 19.0 18.8 18.4 18.6 18.8
運輸業,郵便業 19.9 20.0 19.6 19.3 18.8 19.5
卸売業,小売業 19.0 18.9 18.7 18.3 18.2 18.6
金融業,保険業 18.5 18.6 18.6 18.2 18.2 18.4
不動産業,物品賃貸業 18.7 18.8 18.9 18.7 18.2 18.7
学術研究,専門・技術サービス業 18.8 18.8 18.7 18.5 18.4 18.6
宿泊業,飲食サービス業 16.5 16.3 16.0 15.3 13.7 15.6
生活関連サービス業,娯楽業 18.0 17.7 17.6 16.8 15.1 17.0
教育,学習支援業 16.7 16.7 16.8 16.5 16.1 16.6
医療,福祉 18.7 18.7 18.7 18.3 18.2 18.5
複合サービス事業 19.7 19.8 19.3 18.9 19.1 19.4
サービス業 18.6 18.5 18.4 17.9 17.6 18.2

※単位:日数

施工管理の残業時間が多くなる理由


月の残業時間が多く、休日出勤もあると分かりましたが、そもそもなぜ建設業の中でも施工管理の残業時間が多くなるのでしょうか。

残業が必要になる理由を具体例を踏まえて紹介します。

事務処理が多い

施工管理は現場のパトロールや工程管理以外に、社内書類の事務処理や発注者に対する書類の作成といった事務処理のような業務も多いです。

1日の中で日中は職人や重機などの手配、現場の安全管理を踏まえた巡回が主なので、職人たちが退社した後の夕方以降にようやく作業の報告書などの事務処理に手を付けることができます。

そうすると、8時から始まって定時となる17時までに仕事が終わることはありません。
関係者とのメールのやり取りも含めて残業が多くなる原因の一つになっています。

工期が厳しい

建設の工程が短かったり、工程が予定より遅れていると残業だけでなく土日出勤も求められることがあります。

例えば店舗であれば完成日に合わせてオープンが決められていたり、マンションは引き渡しの日取りが決まっています。

そうした際には工期を伸ばすことは認められず、なにがなんでも工程通りに施工を進めることが求められるため、施工管理者も残業して日々の業務の対応をしなければなりません。

人員不足

戸建てなどの住宅や小規模の店舗の施工管理者は一人で複数の案件を掛け持ちをして欲しいと言われることが多いです。

担当する建設物が多いとそれに伴って書類作成業務も増え、残業する必要性が出てきます。
また、大きな現場における施工管理でも一人に対して業務が多いことから、残業しなければ終わらないという現状もあります。

施工管理者が必要数いれば業務の分担ができますが、人員不足という問題があるため改善が難しいのが現状です。

周囲が残業している

作業所の施工管理者やスタッフが多いと、上長が残業しているから帰りづらいという場合や、逆に部下が残業しているから自分も残ろうという考え方をする場合も多いです。

そうした周囲に合わせた働き方をしてしまうことにより、作業所全体の残業時間が増える要因になっています。

予想外の作業が出てくる

工程には無い予想外の業務が出てくると、その対応に追われて残業することもあります。
例えば解体作業で図面通りに解体を進めていると図面には無い想定外の埋設物や配管が出てきたりすると、作業を中断する必要が出てきます。

そうしたイレギュラーに対応していると残業せざるを得ない状況となります。

働き方改革は進んでいるのか


働き方改革が呼びかけられている中、建設業における取り組みはどうなっているのでしょうか。
長時間労働を解消するための取り組みなどについて紹介します。

働き方改革適用スタートは2024年

建設業では2024年4月1日から労働時間の上限を守らない場合は罰則が設けられるようになります。

そのため、国土交通省は「建設業働き方改革加速化プログラム」を発表し、週休2日制の導入や発注性に適正な工期を設定することを求めています。

ただし、復旧や復興に関する業務の場合は、月に100時間未満、2ヶ月~6ヶ月の平均が80時間以内の条件を適用しません。

それ以外の業務では36協定に準じた働き方をしなければなりません。

AIやロボットの導入

国土交通省はi-Construction推進をしており、2025年には生産率を2割上げるという目標を掲げています。

実際に作業所ではAIやロボットなどの導入を進めており、具体的には現場にiPhoneやタブレットを導入して報告書類のペーパーレス化を図っています。

また、ウェアラブルカメラを使用することで現場と事務所の遠隔での連絡をスムーズにし、生産性の向上を図り、働き方改革を進めています。

技術者派遣

施工管理者の補助をするための技術者を派遣し、必要な施工現場に必要な人数を確保することで働き方改革を進めています。

また、「建設キャリアアップシステム」の導入により、技能者のレベルを明確化し、現場ごとに的確な技術者派遣を行うようにも努めています。

ブラックではない会社もある

残業や休日出勤を行わない会社もあります。
国土交通省が発注する土木工事は週休二日を実施する工事に共通仮設費や現場管理費を上乗せして費用を算出することがあります。

これにより、予算が確保できるようになった会社はICTなどの設備を整えて業務効率化ができ、土日休みと残業抑制が可能となります。

できるだけ残業の少ない職場で働くには


残業が少ない施工管理の特徴にはどういったものが挙げられるか紹介します。

適切な工期を設けている現場

発注者が適正な工期を設けている場合は、タイトなスケジュールに合わせた残業が少なくなります。
特に国土交通省が発注する公共工事や、土日を休みとする工程を作っている会社だと残業を減らすことができます。

人員確保ができている現場

施工管理の規模に合わせて人手の確保ができている現場は、業務を分担することができるため残業時間が抑制されます。

また、補助金などを受けて発注される民間工事は人件費も確保できている傾向があります。

BIM/CIMやDXを取り入れている現場

建物などの3Dモデルを見ながら、施工における計画を具体的に検討できたり、施工ステップを表すモデルなら組み上がっていく順番に合わせて現場の進捗状況を確認できたりします。

そうした出来高や工程管理にBIM/CIMが活用でき、DX(デジタルトランスフォーメーション)と共に施工現場でも活用が進んでいます。

DXと3Dモデルを設計から施工まで取り入れることで、施工時の出戻りを防ぐという効果があります。

ICTを取り入れている現場

ICTを取り入れている施工現場は、設計とやり取りをクラウドで行うことで情報共有やデータの管理を円滑にしています。

また、現場にAIを搭載したカメラを設置して注意喚起などをしやすくすることで、施工管理における安全管理を適切に行います。

具体的には作業者ごとに安全教育の動画を説明する際にも、遠隔操作で動画を流すことで事業所内の作業時間を増やすことができ、残業時間の削減が図れます。

電子化や外注化を取り入れている

日報や報告書といった作業書類を電子化していたり、施工図や事務所類の修正・作成を外注化している場合は残業が少ない傾向があります。

施工管理者は書類や図面の業務に費やす時間が少なくなり、日中の作業に集中することで残業を減らせます。

具体的には建設業許可等の手続き・申請を電子化したり、電子黒板を使うことで現場と作業所での確認をスムーズにしたりといった例が挙げられます。

転職すれば残業時間は減らせるか


転職により残業時間を減らせた例を3つ紹介します。

事例1:建築の施工管理から土木の施工管理へ

建築の施工管理から土木の施工管理に転職し、残業時間を減らすことができました。
建築は民間の業務を受注することから無理な工程が組まれることもありますが、土木は国からの受注により建築と比べて工程に余裕があります。そうした公共工事を中心とした企業に転職できたことでワークライフバランスも意識できるようになりました。

事例2:ICTを導入していない会社から導入している施工管理へ

ICTを積極的に導入し、書類の簡素化を進めている企業に転職することで前の施工管理よりも残業時間が減りました。

特に作業所にいながらiPhoneなどを経由して遠隔で指示・確認をすることできるようになり、施工管理者が現地に直接出向く回数を減らせるのが大きいです。これにより、複数の現場をかけ持ちもしやすくなり、作業効率化もできるようになりました。

事例3:適正な工期を設定していない会社から設定している施工管理へ

国土交通省は週休2日応援サイトにおいて「工期設定支援システム」を公開しており、それに基づいた工期を設定している会社に転職しました。

これにより建設現場は主に土日となる週二日閉所が適用されており、休日出勤と残業時間が減りました。
無理のない、短い工期を設定していない会社なので安心です。
働く時間が減りましたが、生産性を維持するために作業所内の業務効率化も進めています。

まとめ


施工管理が長時間労働になりやすい原因として、平日の残業時間だけでなく休日出勤も多いこと、またそれを余儀なくされる現場の状況などがあることを解説してきました。

もし自分の労働時間が長すぎる、心身共に辛いと感じた場合は、転職を視野に入れるのも一つの手です。

施工管理の現状と将来を見据えた働き方の改善を考えると良いでしょう。

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