ファシリティマネジメントってなに?目的や必要性は?資格は必要?

ファシリティマネジメントという言葉をご存知でしょうか。
業務用不動産を経営をするにあたってコストを最小に効果を最大限に運営していくための管理方法のことです

簡単に言えば、建物が建った後の不動産に対して、経営的視点から運営、管理を計画し実行します。

今回はファシリティマネジメントの目的や必要性、将来性などについて徹底的に解説します。

ファシリティマネジメントとは


ファシリティマネジメントとは、業務用不動産の経営的な管理方法のことで、発祥はアメリカです。

国際規格となったのは2018年4月で比較的新しい分野となります。

ISOの定義では「企業・団体等が組織活動のために、施設とその環境を総合的に企画、管理、活用する経営活動」とされています。

要するに、ビジネスを行う上で必要となる、土地、建物、設備機器、執務空間を総合的に見て最小のコストで最大限の効果を発揮できるように管理する活動ということです。

具体的にはどのような目的で活動しているのでしょう。

ファシリティマネジメントの目的


それではファシリティマネジメントの目的について解説します。

ライフサイクルコスト(LCC)の最小化

ライフサイクルコスト(LCC)とは、施設を新築してから役目を終えて取り壊すまでに掛かる費用の総額のことです。

一般的には最も費用の掛かるものは、建設費と思われがちですが、実は建設費はLCCの30%程度と言われており、残りの70%は竣工後の費用と言われています。

よってビルの経営などでは、ビルが使われ始めてからの費用をどこまで減らすことができるかが大事な課題です。

そのためファシリティマネジメントは施設を長く使い続けるために定期的なメンテナンスを計画、実行し施設の寿命を延ばすことを求められるのです。

設備などの資産管理、活用

ファシリティマネジメントの仕事は、施設の管理だけではありません。
施設内には、コピー機などのオフィス什器、防災設備、照明設備、エアコンなど経営活動を行う上で必要な多くの備品や設備があります。

ファシリティマネジメントではそういったものも総合的に管理し活用方法を考えなければなりません。

長期的な視点で効果を最大限に活用していくためには日々の点検が欠かせません。

環境に配慮した運営

施設運営をしていくにあたっては環境に配慮した提案をしていくこともファシリティマネジメントの仕事です。

改修を行う場合には照明やその他設備などを省エネのものに変更し、CO2削減に配慮することや、建て替えるのではなく既存の建物にリノベーションを施して資材を減らすことなど、長期的な目線で環境に配慮した運営をしていかなければなりません。

プロパティマネジメントとの違い


ファシリティマネジメントと同じように施設など不動産を管理する活動の1つとして、プロパティマネジメントというものがあります。

どちらも不動産を管理する立場として混同されやすいです。
ここではファシリティマネジメントとプロパティマネジメントの違いについて解説します。

ファシリティマネジメントを経営視点からみた管理とすると、プロパティマネジメントは所有者視点からみた管理です。

所有者つまり物件のオーナーです。
プロパティマネジメントはオーナーの物件の資産価値を最大限にするための最適な管理をすることなのです。

具体的な業務内容としては、賃料の回収、利用者、居住者とのトラブル時の対応など不動産を経営していくに当たっての実務代行です。

ファシリティマネジメントの業務例 プロパティマネジメントの業務例
■最小コストで施設を最大限活用する方法の立案、実行
■施設経営コンサル
■稼働していない施設の有効活用 ほか
■施設の巡回、点検、清掃の管理
■テナント契約者の顧客管理
■賃料の集金業務入居者とのトラブル対応 ほか

ファシリティマネジメントの必要性とメリット


ファシリティマネジメントの必要性と採用する場合のメリットについて解説します。

ライフサイクルコスト(LCC)を最適化できる

先程も説明しました、ライフサイクルコスト(LCC)ですが、ファシリティマネジメントはこのライフサイクルコストの低減を重要視しています。

企画・計画段階からファシリティマネジメントが介入することで長期的な修繕計画を立てることが可能となり、結果的に資産価値の維持に繋がります。

施設の活用を最大限にできる

稼働していないが取り壊す予定もない施設というものが現代の日本には多くあります。

これらは所有しているだけで、なにか収益を生むわけではないので、企業にとっては負の遺産となっており、経営者の頭を悩ませるものです。

ファシリティマネジメントはこういった施設の有効活用するための方法を立案します。
経営者の悩みが代わって収益化する可能性もあるのです。

経営の効率化を図れる

ファシリティマネジメントは経営者的視点に立って、従業員が効率的に働ける環境作りを目指し、業務の効率化を通して結果的に経営の効率化を図ることが可能となります。

施設の間取りや備品や設備などを分析し、より効率的に働ける状態を提案していきます。

ファシリティマネジメントの認定資格

認定ファシリティマネジャー(CFMJ)とは

ファシリティマネジメントを行う上では、公的な資格は必要ありません。
しかし、ファシリティマネジメントに必要な知識や能力を有していることを証明し、信頼性を担保する資格として認定ファシリティマネジャー(CFMJ)があります。

この資格は平成9年度からスタートした資格で、現在以下の3つの団体によって運営されています。

■公益社団法人日本ファシリティマネジメント協会(JFMA)
■一般社団法人ニューオフィス推進協会(NOPA)
■公益社団法人ロングライフビル推進協会(BELCA)

証明できる知識・能力

認定ファシリティマネジャーを取得することで証明できる知識と能力は主に3つあります。

■FMの統括マネジメントならびにFMの戦略。中長期実行計画、それに基づく不動産取得、賃貸借、建設等のプロジェクト管理、そして運営維持と評価の流れに沿ったFM業務に関する知識・能力

■FMのための社会性、人間性、企業性、施設、情報等の関連知識

■FMを支える利用者の満足度等の調査・分析、品質分析・評価、ファシリティコスト・投資等の財務分析・評価、需給対応・施設利用度等の分析・評価、そして企画立案やプレゼンテーション等の技術

引用元:公益社団法人 日本ファシリティマネジメント協会

取得するまでの流れ

令和4年度の認定ファシリティマネジャー資格を取得するまでの流れを記します。

申込期間:令和4年4月1日(金)10:00〜令和4年6月2日(木)
申込先:CBTテストセンター

  受験料手数料払込:令和4年6月2日(木)まで

  ↓

  学科試験:令和4年5月28日(土)〜令和4年6月5日(日)までの期間

  ↓

  学科試験合格

  ↓

  論述試験会場予約:令和4年5月28日(土)〜令和4年6月10日(金)

  ↓

 

  論述試験:令和4年7月2日(土) 3回実施 ※1〜3回のうち1回のみ受験

  ↓

  合格発表:令和4年9月1日(木)10:00から

  ↓

  認定ファシリティマネジャー試験合格!

  ↓

資格登録申請請:令和4年9月2日(金)から

  ↓

  資格登録証交付:令和4年11月初旬から

  ↓

  認定ファシリティマネジャー資格取得!

 

試験内容

試験内容は以下の通りです。

試験区分 科目 試験の出題範囲 必須教科書
学科試験 FM概論 第1部 経営とファシリティマネジメント
 1章 ファシリティマネジメントとは
 2章 ファシリティマネジメントの効果
 3章 経営環境とファシリティマネジメント
「公式ガイドファシリティマネジメント」
(最新2021年11月1版5刷)
FM推進連絡協議会 編
日本経済新聞出版 刊
FM業務 第2部 ファシリティマネジメントの業務
 4章 ファシリティマネジメントの体系
 5章 統括マネジメント
 6章 FM戦略・計画
 7章 プロジェクト管理
 8章 運営維持
 9章 評価
10章 改善
FM知識 第3部 ファシリティマネジメントの知識
11章 人間性関連知識
12章 ワークプレイス関連の知識
13章 不動産取引関連の知識
14章 施設関連の知識
15章 ファシリティマネジメントの関連法規 
論述試験 論述 ・実際のFM業務を行う上で必要な問題抽出能力と問題解決能力
・相手に理解してもらうための表現力と提案力と説得力
※論述解答はPC入力

合格後に登録申請が必要

認定ファシリティマネジャーは資格試験に合格するだけでは資格を取得することができず、登録申請が必要です。

新規登録申請には下記の通り期限が決められています。
合格年+5年間 ※令和4年度試験合格の場合 合格証発行日〜令和10年3月31日まで

そして、新規登録をする際に限って、実務経験の必要年数が設けられています。

最終学歴 実務経験年数
4年制大学またはこれに準じるもの 卒業後 2年以上
3年生短期大学 卒業後 3年以上
2年制短期大学、高等専門学校またはこれに準じるもの 卒業後 4年以上
高等学校またはこれに準じるもの 卒業後 5年以上
その他の者 7年以上

よって受験をする際には自身の実務経験年数と必要年数を比較し、5年以内で達成可能な年に受験をする必要があります。

ファシリティマネジメントの将来性


ファシリティマネジメントの将来性は今後ますます、需要が高まっていくことが予想されます。
一昔前までは、古くなった建物は壊して新たに建て替える、いわゆる「スクラップ&ビルド」が主流でしたが、近年では資源の有効活用の考え方が求められています。

施設の計画段階から、取り壊されるまでの有効な運用法を考えることができるファシリティマネジメントは、今の時代のニーズに合っているため、今後ますます仕事は増えていくでしょう。

また、現在の日本では、企業、団体などが所有する既に使われていない施設などが多くあり、それらの既存施設を有効活用することができれば、企業にとっても無駄がなくなります。

労働人口の減少によって将来の日本経済は膨張はせず、縮小していくのが当然の時代ですので、ファシリティマネジメントはこれからの時代に必要と言えます。

ファシリティマネジメントの事例

ここでは日本ファシリティマネジメント協会が平成18年度より毎年開催している日本ファシリティマネジメント大賞の事例について紹介します。

事例1 体制札幌ビルにおけるファシリティマネジメントとその展開(第3回大成建設株式会社)

大成建設株式会社は自社ビル建設にあたって、計画、設計・施工、竣工後の運用管理まで一貫してFM手法を適用し、そこで得た知見をその後の社内における活動に積極的に展開している成果が評価された事例です。

地震対策や地域活性化、地球環境への配慮、さらに社員のモチベーション向上のための新ワークプレイスの試みなど総合的視点で計画された施設です。

 

事例2 廃校となった校舎を活用した食品工場(第10回㈱山口油屋福太郎)

この事例は不稼働化した廃校を食品工場として有効活用した事例です。

地域のシンボルであり地域の人にとって思い入れのある建物の外観はできる限り現状を維持することで地域住民への配慮も見られ、また雇用促進にも繋がり持続可能な地域活性化も実現することができました。

 

建設コストも新築した場合と比較すると約40%削減することができ、事業者にとっても事業コストの大幅削減に繋がりました。

 

事例3 築90年の近三ビルにおけるFMの取り組み(第16回近三商事㈱)

築90年の自社ビルのファシリティマネジメントの取り組み事例です。

改修工事を幾度も繰り返しその度に少しずつ設備の変更などを行い、環境に考慮した省エネビルを目指しました。取り組みの結果2010年から2020年の10年間で電気使用量がなんと40%も削減、光熱費も23%減となりました。

その他ファシリティマネジメントに繋がるさまざまな取り組みを社内一丸となって行っています。

まとめ


今回はファシリティマネジメントについて解説しました。

従来の施設管理にプラスして施設と環境を総合的に企画、活用する経営活動を行うファシリティマネジメントは、最小のコストで最大の効果を発揮させ、経済が縮小していくこれからの日本にとって必須の能力です。

この記事が少しでも参考になれば幸いです。

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