建築設備士とは?受験資格や難易度、転職事例なども詳しくご紹介します。

建築設備に関する仕事は、有資格者でなければ設計を行うことができないということはなく、有資格者でなくても設計の現場で活躍している方は多く存在しています。

しかし、有資格者であることへの信頼感や施主の要望などによる指定も行われています。

建築設備士とは

建築設備士とは建築物を設計する時に建築設備の設計や工事監理に関する助言等を行う資格となっています。

建築士が建築設備士の意見を聞いた際には、建築確認申請や工事完了届へ明記することとなっています。

仕事内容

建築設備士は建築士に対して助言を行うことが業務内容となっています。
一方で、書類に建築設備士を記載せずとも書類提出が可能な場合もあり、建築士が建築設備士への助言を求めずに設計や工事監理を行うことも可能となっています。

建築設備士でなければ設計できないという建築物は大規模な物件に限られ、有資格者でなくても設計を行うことは可能です。

しかし、建築物への安全性や高度化した建築設備に対する信頼性から、クライアントに設計条件を指定される場合もあります。

平均年収とは

建築設備士の平均年収は約700万円程度とされています。
同じ建築設備士でも務める企業や業務請負範囲、ほかの資格の保有状況によって収入は大きく変ります。

大手企業の建築設備士や大規模な設備設計事務所では元請けになることや一次下請けでの仕事となることもあり、収入は高い傾向にあります。

二次下請けを中心として仕事をする小規模企業では収入は低めとなります。

建築設備士試験について

建築設備士試験は受験資格があるため、誰でも受験可能ではありません。
建築設備の内容だけではなく、建築への一般知識なども求められています。

試験概要

建築設備士試験ではインターネット申し込みが中心となっており、インターネットからの申し込みができない方は受付方法を案内してくれます。

第一次試験である学科試験と第二次試験である設計製図の2つに分かれています。
建築物への一般知識や建築法規などの知識も求められるため、幅広い知識を持っていなければ合格することは難しいでしょう。

そのため受験資格も設定されており、建築設計だけではなく建築設備設計に携わっている方だけに資格が付与されます。

受験資格

受験資格は以下のようになっています。

参考:公益財団法人 建築技術教育普及センターhttps://www.jaeic.or.jp/shiken/bmee/bmee-shikenannai2022.html

建築設備に関する実務経験について

実務経験として認められるもの
・設計事務所、設備工事会社、建設会社、維持管理会社等での建築設備の設計・工事監理 (その補助を含む)、施工管理、積算、維持管理(保全、改修を伴うものに限る)の業務
・官公庁での建築設備の行政、営繕業務
・大学、工業高校等での建築設備の教育
・大学院、研究所等での建築設備の研究(研究テーマの明示を必要とします)
・設備機器製造会社等での建築設備システムの設計業務
実務経験として認められないもの
・建築物の設計・工事監理、施工管理等を行っていたが、このうち建築設備に関する業務に直接携わっていなかった場合
・単なる作業員としての建築設備に関する業務(設計図書のトレース、計器類の監視・記録、機器類の運転、その他工事施工における単純労働等)

一次試験の内容

建築設備士の一次試験は学科試験となります。
一次試験は1日で行われ、2科目の試験となります。
建築に関する一般知識や建築法規・建築設備に関する試験に分かれており、2時間30分と3時間30分の長丁場となっています。

建築設備士試験では法令集を1冊持ち込みすることが可能となっており、法規の問題の際に使用します。

一次試験の問題全てで100問あり、集中力を切らさないように問題を解いていく必要があります。

二次試験の内容

建築設備士の二次試験は製図の試験と計算問題となります。
製図をするため、時間の配分を考えながら作業を行う必要があり、空調設備・衛生設備・電気設備の平面図を作成して行きます。

建築設備に対する全ての知識を網羅する必要があるため、幅広い範囲の試験となります。
もちろん、建築図が読み取りすることができなければ、建築設備の各項目を製図することはできませんので建築設計図と建築設備図の両方を正確に理解している必要があります。

資格取得までの流れ

建築設備士は一次試験と二次試験からなっているため、一次試験に合格しなければ二次試験に進むことはできません。

二次試験に不合格であった場合でも、前年に一次試験に合格していた場合では一次試験を免除されて二次試験を受験することが可能です。

前年だけの設定となっているため、それ以降はまた受験し直しとなります。

難易度と勉強方法


建築設備士試験は受験資格を絞っている国家資格であるため、合格率は低めに推移しています。

合格基準として各試験項目での基準もあり、その数値を下回ると不合格となります。

一次試験の難易度・合格率

一次試験の合格率は30%前後であることが多く、難易度は一級建築士などよりは低めとなっています。

一次試験での科目ごとの合格基準として、建築一般知識では4割以上、建築法規では5割以上、建築設備では4割以上と設定されているため、得意な科目だけで点数をあげようとすることは難しいです。

全体として6割以上の点数を獲得する必要があり、全体的に知識を持っていることが求められるため難易度は高くなっています。

一次試験の勉強方法

建築設備士では建築設備に関する問題だけではなく、建築の計画や構造力学などの建築一般知識からの出題も範囲に含まれています。

建築の知識は一級建築士試験のような問題ではなく、二級建築士試験で出題される一般知識となります。

参考書を購入することや資格学校に通うことも可能となります。
日々の仕事だけでは基礎知識の獲得は可能ですが、試験用の勉強も必要となります。
過去問をこなすことも一次試験合格の近道となります。
建築設備に関する問題は専門性の高い問題が多く、建築士試験よりも高度な問題が出題されます。

管工事や電気設備工事などの問題と合わせて学習することで建築設備に関する幅広い知識を得ることとなります。

二次試験の難易度・合格率

建築設備士の二次試験では50%前後が合格率となっており、総合した建築設備士の合格率は15%から20%ほどとなります。

空調設備や給排水設備、電気設備と建築設備を網羅して製図を行う必要があるため、範囲が広く難しい試験ではあります。

しかし、設計事務所での業務などを日常的に行なっている方であれば問題なく受験することは可能です。

基本計画から作図を行うことは日々の業務であり、出題される内容を確認して作業を進めて行きます。

二次試験の勉強方法

二次試験では製図を行います。
設計概要を記載する基本計画の策定や、作図を中心とする基本設計の2つの項目を実施します。
一次試験とは違い、マークシートでの自動採点方式ではなく、試験監督が文章などを読み取ることで採点します。

丁寧に記載することで試験監督の読み取りやすい書き方をすることが求められます。
二次試験の勉強方法は、講習会に参加することが一番の近道と言われています。
日本設備設計事務所協会連合会のウエブサイトから申込を行い、講習会の費用も発生します。

講習会には定員があるため近場での講習会には、早めに申し込みすることがおすすめとなります。

関連資格との難易度比較


建築設備士は合格率が15%ほどとなっていますが、そのほかの建築設計関連や工事管理の資格の合格率と比べてみましょう。

1級・2級建築士との難易度比較

建築設備士の業務は建築士と仕事を行うことが多いです。
1級建築士試験での合格率は10%程度となっており、合格率は低いため難易度の高い資格となっています。

建築士も建築設備士同様に一次試験と二次試験に分かれており、学科と製図の試験が行われます。

2級建築士の合格率は25%前後と1級建築士や建築設備士よりも難易度は低いですが、難しい資格試験であることに変わりはありません。

1級・2級管工事施工管理技士との難易度比較

管工事施工管理技士の資格は建築工事において、衛生設備や空調設備などの管工事の施工管理を行う資格となります。

建築設備士とは違い、主に工事現場の管理や工事の進捗確認などを行います。
1級と2級に分かれており、1級管工事施工管理技士の合格率は一次試験では25%から50%ほど、二次試験では50%から60%となっています。

2級管工事施工管理技士では一次試験が50%から60%、二次試験では45%ほどとなっています。

1級・2級電気工事施工管理技士との難易度比較

建築設備士の試験科目のひとつである電気設備についても施工管理の資格があります。
電気工事施工管理技士の資格では電気設備工事の施工管理や安全管理などを行う資格となります。

資格が1級と2級に分かれており、どちらも一次と二次に試験が分かれています。
1級電気工事施工管理技士の一次の合格率は40%から60%、二次では60%から70%となっています。

2級電気工事施工管理技士の一次では50%から60%、二次では40%から60%となっています。

資格取得のメリット


建築設備士を取得することでメリットもあります。どのようなメリットがあるか確認していきましょう。

建築士の受験資格獲得

建築士は受験資格を設けて試験が行われています。
建築設備士を取得することで、実務経験関係なしに1級建築士・2級建築士・木造建築士の受験資格が付与されます。

建築士事務所を開設することも可能になることや転職・独立などで活躍するチャンスも広がる可能性があります。

建築設備士の試験でも2級建築士や木造建築士などの試験問題と同じ内容の項目もあるため、建築の専門性の高い知識を学ぶことで十分合格の可能性はあります。

設備設計1級建築士講習の受験資格

建築設備士を取得することで設備設計1級建築士講習の受講資格を得ることとなります。
設備設計1級建築士の資格は1級建築士を取得後5年の実務経験を行うことで講義と終了考査の資格が得られます。

それらをパスしてようやく設備設計1級建築士の資格が与えられますので、建築設備士を取得することで実務経験無しに講義と修了考査に挑むこととなります。

加えて、設備設計部分の講義と修了考査を免除されるために有利となっています。

専門家としての証明になる

日々の技術の進化は建築設備や建築業界でも進んでおり、高度化・複雑化した建物や設備機器などが登場しています。

安全で快適な建物の建築には欠かせない専門的なスキルであるため、資格を取得していることは大きなアドバンテージになります。

専門家としての地位を築くことで、転職や独立開業を考えた時にも有利となります。
また、設計業務以外で活躍することもできるので、建設コンサルタントに転職するなど、キャリアを変えることも選択肢としてあげられます。

建築設備士を取得しての成功事例・転職事例


建築設備士を取得することで働いている企業内での地位向上や転職を行う場合などに有利に働くことがあります。

成功事例や転職事例を確認していきましょう。

事例1:建築設備士取得で社内評価アップ

建築設備士の資格を取得後、意見を求められる立場に変わりました。
日々の設計や工事監理業務を行うことに加えて、管理職的な立場で上がってきた設計図のチェックを行っています。

資格手当で毎月の給料はアップされていることと合わせて、立場が変わったことで給料も増えて満足しています。

事例2:建築設備士を取得して設備設計1級建築士も取得

建築設備士を取得後に、設備設計1級建築士の資格もすぐに取得しました。
建築設備士の資格を取得したことで、実務経験がなくても講義と修了考査だけで資格が取得できました。

設備設計1級建築士が適合性の確認や設計を行う必要がある物件がありますので、建築設備士よりさらに仕事の範囲が増え、収入面でもかなりUPしました。

事例3:資格取得後に転職して給料アップに成功

大手総合設計事務所への転職を行ったことにより収入アップに成功しました。
建築設備士の資格を取得したことによって、クライアントであった設計事務所から誘いがありました。

設備設計会社で働いていましたが、毎日忙しいわりには給料が少ないと感じていました。
そのため資格取得を機に転職を選択肢として持っていましたが、タイミングよく声をかけてもらうことができました。

まとめ


建築設備士の資格は設備設計の専門家であることの証明となります。
確認申請や完了届などに建築設備士の署名をする箇所も存在します。
現代では高度化や複雑化に伴い、建築設備を総合的にチェックできる人材が必要となっていることから、建築設備士の需要は多くなっています。

また、資格取得することで設備設計1級建築士の資格を取りやすくなりますので、関連する業種や今後キャリアアップを考えられている方は、受験を検討してみてはいかがでしょうか。

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