BIMとは?CADの違いやメリットデメリットをわかりやすく解説!

建設業においてBIM(ビム)を導入するゼネコンや設計会社が増えていますが、BIMについて詳しく知っている人はまだ多くいません。
しかし、国土交通省もBIM推進に取り組んでいることから分かる通り、各々の設計会社でもBIMの導入が増えていくことが予想されます。

今回はBIMについて概要からメリットなどについて紹介します。
BIMの3次元モデルと2次元CADと違いやソフトについて、また活用方法や設計・施工時の特徴などについても具体的に解説していきます。

BIMとは?


BIM(ビム)とはBuilding Information Modelingの頭文字をとった略称であり、パソコンのソフト上で建築物の3次元モデルを構築することを指します。
建物の外観や壁の位置といった形だけではなく、室名部屋面積部材仕上げの仕様といった属性情報も併せ持っているのが特徴です。

BIMを導入することで建築全体の品質確保から維持管理まで行えるため、国交省もBIM導入を推進しています。
そのため、ゼネコン各社にはBIMを導入するための部署が設けられていたり、コンサルタント会社と協力しているのが現状です。

BIMの普及率と現状

BIMの普及率は、設計事務所では35%施工会社設計部では27%ほどであり、その内の半数近くは検討や研修中という段階です。
そのため全ての会社がBIMを活用しきれているわけではありません。
10社に3社という割合でしかBIMが導入されていないと考えると、まだまだ普及率が高いとは言えないでしょう。

一方で「BIMを導入予定・興味がある」と答えている会社は40%に上ります。BIMを取り入れてみたいと思う会社も多い中、「BIMとは何か」ということを把握しきれていないのも事実です。

BIMとCADの違いは?


BIMとCADの違いですが、これまで建設業においての設計では、2次元CADを使用し建築物を線と文字で表してきました。
そのため、平面図を修正した場合は各立面図や断面図も直さねばならず、いわゆる「直し忘れ」の発生も少なくはありません。

一方、BIMを活用した設計では建築物を3次元モデル化し、モデルを修正することで各図面にも反映されるという違いがあります。
3次元モデルは視覚的にも形状がわかりやすく、どの壁にどんな種類の窓やドアといった建具が配置されるのか、部屋の名称や面積の確認にも役立つのが特徴です。

BIMでの作業の手順3つ


BIMによる設計・施工・維持管理における大まかな手順を紹介します。
以下の流れにおいて詳細な設計からBIMを使用したり、各手順だけに使ったりすることもあり、各社で少しずつBIMによってできる範囲を増やしているのが現状です。

  • 大まかな設計(企画・基本設計)
  • 細部の設計(実施・詳細設計)
  • 施工から維持管理まで

1.大まかな設計(企画・基本設計)

敷地に対してどのような建物を建てるのか、また人の流れ外観のシミュレーション基本設計として最初に行います。
建物の見た目と周囲との景観の調和、照明シミュレーションや日影・天空率の計算もする中で、各部屋の意匠検討も踏まえて進めていきます。

BIMで簡易的に3次元モデルを作ることで周囲との景観の確認にも使えるため、施主・住民に対するプレゼンテーションもできます。

2.細部の設計(実施・詳細設計)

建物の概要が決まると、柱や梁といった構造や空調などの設備の詳細を詰めていく実施設計に移ります。
その際には各モデル間での干渉チェックも行い、施工がスムーズに進むよう細部を確認することも可能です。
必要な情報が詰まった3次元モデルが完成していき、そこから材料の発注に必要な積算をすることもあります。

3.施工から維持管理まで

施工時において、BIMの3次元モデルは施工ステップの確認に使われます。
どういった手順(ステップ)で建物が作られていくのかを現場で把握できるため、進捗の確認に重宝します。

また、施工後の建物の維持において、3次元モデルを使うと建物全体のライフサイクルの管理が可能になり、建設後の建物の維持・管理に関わるコスト削減にも繋がります。

BIMのメリットデメリット


BIMを活用することで設計・施工・維持から管理までにおいて、様々なメリットやデメリットがあります。
具体的にどのようなことがあるのかについて紹介しましょう。

6つのメリット

  • 整合性のある図面を作成できる
  • 施主や住民説明用に活用できる
  • 納まりの検討が可能
  • 施工現場での進捗管理がしやすい
  • 維持管理にも貢献
  • 属性情報による積算への活用

<整合性のある図面を作成できる>

2次元図面で設計を進めると、変更があった時に各図面で整合性が取れなくなることが多くあります。
部屋のドアを片開きから両開きに変えた平面図にして建具表は直っていなかったり、構造図で部材の変更をしたのに意匠図には反映されていなかったりします。

そうした不整合を回避するためにも、BIMで3次元モデルを作成することが推奨されています。
具体的には建具や構造部材を変更すれば各図面に反映されるため、変更に強いのがポイントです。
そのためBIMの魅力は整合性のある図面の作成ができることだと言えます。

<施主や住民説明用に活用できる>

2次元図面で設計を行い、実際に施工した際に「こんなイメージではなかった」という問題が起きることも少なくありません。
そのため、BIMで3次元モデルを作ることで完成イメージの共有がしやすくなります。
施主との打ち合わせや建物を建てる際の周辺住民への説明も視覚的にわかりやすいのが特徴です。

建物は外壁の仕上げや庇の素材を変えるだけでイメージが大きく変わり、周囲との景観の兼ね合いも大切です。
BIMはそうしたことをクリアにしていき、視覚的な共有がしやすいのがメリットの一つでしょう。

<納まりの検討>

3次元モデルを作成するにあたり、納まりの検討干渉チェックがしやすいのもポイントです。
天井と壁を作成し、そこに建具が加わった際の納まりに問題はないか視覚的にわかりやすいのが特徴です。
意匠と構造、設備のモデルを統合することで相互間の干渉が無いかも確認できます。

<属性情報による積算への活用>

積算といえば図面や仕様書を確認し、数量を計算しながら拾っていくのが主な手法でした。
しかし、BIMの3次元モデルに入っている情報を使えば、積算にかける時間も少なく済みます
躯体のボリュームから建具の個数、内装の仕上げ材の数量などが一括で拾えるのもメリットの一つです。

一方で、どうしても人の目と計算でしか算出できない箇所があり、数量表の形式を変えたりしなければならず、全て自動化するにはまだまだ時間がかかりそうです。

<施工現場での進捗管理がしやすい>

3次元モデルの表示を変えることで施工時の進捗確認も可能です。
例えば躯体を建物の階ごとに表示したり、各部屋の下地や仕上げの状況を視覚的に表すことができます。

施工時に「○月までに、この箇所までを完成させる」という目標を決めた時に、モデルがあると視覚的に分かりやすいのがポイントです。
そのため、現場で職人に説明しやすく、進捗管理もスムーズに行えます。

<維持管理にも貢献>

例えばオフィスビルの建築に当たり、60年のライフサイクルのうち建設にかかる費用は全体の4分の1だと言われています。
残りは建設後の維持・管理でかかる費用であり、その費用を削減するためにもBIMの3次元モデルが使用できます。

設備の名称や個数、各々の点検や交換時期の目安が情報として残されているため把握がしやすかったり、家具や建具などの修理時に問い合わせ先のメーカー情報があれば迅速に対応できたりといったメリットがあります。

4つのデメリット

  • 導入コストが高い
  • 技術者の育成や確保の問題
  • 設計段階で使用する際に時間がかかる
  • 現場での利用が難しいことも

<導入コストが高い>

BIMソフトは2次元CADよりも高く、「導入してからコストを回収できるのか」と問題視されることが多いです。
従来の2次元図面のみで問題なく業務が行える中、コストやリスクを考えて導入しないという会社も少なくありません。

<技術者の育成や確保の問題>

BIMのソフトを扱うための技術者の育成、確保が難しいのもデメリットの一つです。
プロジェクトにBIMを取り入れるとなると、技術者の知識が必要となります。

また、設計だけでなく施工側もBIMの知識を共有せねばならないのが現状です。
会社全体でBIMを推進して技術者を育てていくという姿勢が求められます。

<設計段階で使用する際に時間がかかる>

BIMの3次元モデルを作り上げていく際に、2次元図面を作成するより時間がかかるのもデメリットとして挙げられます。
BIMモデルを作るために建具やキッチン、トイレといった細かなパーツの3次元モデルが必要であり、それらを作成するために最初のプロジェクトでは多くの時間を要します。

一方で、作成した細かなモデルは他のプロジェクトでも使用できるため、BIMの3次元モデル化を続けていくことで徐々に時間が削減できます。
また、設計の段階で施工時に起きうる不整合(干渉ポイントの洗い出しなど)を確認することができるので、施工時の作業量が減るというメリットもあります。

<現場での利用が難しいことも>

BIMの3次元モデルはデータ自体が重いことが多いため、現場で確認するのが難しいこともあります。
具体的にはデータ容量が大きいとダウンロードに時間がかかるノートパソコンだと動きが重くなって見たい情報になかなかたどり着けない、といったデメリットが挙げられるでしょう。
その問題を回避すべく、インターネット上のクラウドにデータを保管してダウンロードの負担を減らして、現場での利用のしやすさも改善されつつあります。

【7選】BIMのおすすめツール

  • Autodesk Revit(オートデスク社)
  • ARCHICAD(GRAPHISOFT)
  • Rhinoceros(Robert McNeel & Associates)
  • AGLOOBE(福井コンピュータアーキテクト)
  • Vectorworks Architect(株式会社山設計工房)
  • Tekla(株式会社トリンブル・ソリューションズ)
  • Rebro (NYKシステムズ)

BIMを導入するにあたりどういったツール(ソフト)があるのか、それぞれの概要やポイントを紹介します。
どのソフトにも言えることですが、最初の導入は大変です。
しかし、使いこなせばよりスムーズな設計・BIMの3次元モデリングができます。長期的な視点で扱うのがおすすめです。

Autodesk Revit(オートデスク社)

Revit(レビット)はBIMの3次元モデル作成ができ、平面図や立面図などの2次元図面の作成積算解析ができるソフトです。
意匠・構造・設備の担当者が各々でモデルを作成し、クラウドで統合することで共同作業も可能です。
そのため、同じサーバーを使用せずに遠隔でのやり取りができるのも特徴です。

同社のInfraWorks(インフラワークス)、Civil 3D(シビル スリーディー)との連携をすることで土木モデルとの統合もしやすいのがポイントです。ただし、Revitとそうした各ソフト間で操作性が大きく異なるため、扱いづらさもあります。
一度にすべて導入せず、一つずつ導入していくのがおすすめです。

ARCHICAD(GRAPHISOFT)

ARCHICAD(アーキキャド)は直感的に3次元モデルを作成しやすく、インターフェイスが見やすいのが特徴です。
建物や内装のレンダリングもしやすいため、プレゼンテーション時にも使いやすいです。
また、日陰のシミュレーション、他者が作成しているモデルとの統合にも役立ちます。

Rhinoceros(Robert McNeel & Associates)

Rhinoceros(ライノセラス)は曲線の多い複雑な形状のモデルが作りやすく部品名などの情報も付与できます。
また、ビジュアルプログラミング言語ツールであるGrasshopper(グラスホッパー)と共に使うことで、構造や意匠の検討をリアルタイムで行えるのもポイントです。
カーテンウォールやルーバーを曲線状に配置したり、直線的な形状の建物以外のBIMの3次元モデルを作成する際におすすめです。

AGLOOBE(福井コンピュータアーキテクト)

GLOOBE(グローブ)は日本の建築基準法に対応しており、法的規制平面計画への柔軟性があるソフトです。
実施設計図面や法規関連図面を3次元モデルから自動的に作成できるのが特徴です。
建物作成時の足場や仮囲いといった仮設の配置計画からシミュレーションまで行えるだけでなく、図面の出力や数量も拾えるのも魅力です。

Vectorworks Architect(株式会社山設計工房)

Vectorworks(ベクターワークス)は直感的にわかりやすいインターフェイスが特徴で、レンダリングモードも多彩です。
太陽光と影の位置の把握にも役立ちます。
建具の寸法や名称の把握から集計機能も備えています。

Tekla(株式会社トリンブル・ソリューションズ)

Tekla(テクラ)は構造設計専門の3次元モデル作成ソフトです。
構造のコンクリートや鉄骨、木材といった各種部材などを扱い、鉄筋のモデル化と組立ができるのがポイントです。
また、詳細度の高い高精度(LOD500)のモデル作成が可能であり、添接板やボルトといった接合部の細かな設計にも役立ちます。
施工時のスケジュール管理もでき、他社のソフトとの連携もしやすいのが特徴です。

Rebro (NYKシステムズ)

Rebro(レブロ)はBIMに対応した設備専用の3次元モデル作成ソフトです。
空調衛生電気設備のモデリングから、各種図面の作成が可能です。

給排水・衛生設備に関する配管や機器のモデル作成や操作がしやすいのが魅力の一つです。
設備関係はRebroで作成し、Revitで作成した建物のモデルと統合してBIMの3次元モデルを製作していくことも多くあります。

まとめ


BIMの3次元モデルについての概要から具体的なメリット、デメリットを紹介しました。
BIM導入の難しさも懸念されますが、長期的な視野でメリットも大きいのが特徴の一つです。

また、国交省がBIM推進を掲げていることもあり、今後はゼネコンだけでなく各々の設計会社でもBIMの導入が増えます。
まずは大きな建設プロジェクトではなく小さなプロジェクトからBIMを導入し始め、少しずつBIMでできることを増やしていくのが大切です。

引用:図-4・5
建築士事務所におけるBIM実態調査と日事連の取り組み|特集記事資料館|建設総合ポータルサイト けんせつPlaza

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