設備設計とは?仕事の流れや年収、将来性などについて徹底解説!

設備設計は建物の形ではなく、その建物内で人が快適に過ごせる様に給排水や電気、空調などのインフラを調えるために設計をする仕事です。
意匠設計とは違い、建物の表にはあまり出てこないため、一見地味にも感じますがこの設備設計の仕事がなければ建築物として機能することが出来ません。
そのためこの仕事はとても重要です。

今回は設備設計について解説します。
仕事の流れや年収についてや設備設計事務所の主要企業などが分かる内容となっています。

設備設計とは

建築物をつくるにあたっては大きく分けて、意匠設計・構造設計・設備設計の3つの設計が必要です。
その中で設備設計は建築物そのものではなく、建築物の室内環境を良質化するための設計業務です。

良質な室内環境とは給排水や電気、空調、防音性、採光、臭気などを考慮した室内環境のことを言い、それらを実現するための設計を行う仕事を設備設計と言います。

設備設計の役割

設備設計は時代とともに複雑化しています。
配管、配線の材質や昔は存在していなかったLANケーブルの登場により検討箇所が増えたこと、昔の建築ではそこまで意識をしていなかった居住スペースから出来るだけ配管を見せない配管ルートの検討などの意匠性を意識すること、などにより設備設計は他の設計よりも変化のスピードが早いと言えます。

設備設計はそんな日々進化しているインフラに対する対応と老朽化を迎えた際のメンテナンス性を考え、意匠設計と協力をしながら設計を行います

意匠設計や構造設計との違い

先ほど建築物をつくるにあたっては大きく3つの設計が必要であることを説明しましたが、その中で出てきた意匠設計や構造設計とはどういったものなのでしょう。
設備設計とはどこが違うのでしょうか。

まず、意匠設計とは建築物のインフラの整備ではなく、建築物の形や色などのデザインや使いやすい間取りなど、人が生活する上で見える箇所を設計する仕事です。
また意匠設計は各設計との間をとりもつ存在でもあり、いわば設計チームの総監督といった位置づけとなります。

次に構造設計は建築物の構造体そのものを設計する仕事です。
意匠設計がデザインした建築物に対し構造計算を行い、梁や柱、スラブなどの厚みの設定、配筋の計算などを行います。

業務の流れ

設計と聞くと図面を描く仕事と考えやすいでしょうが、設計の仕事はそれだけでは終わりません。
ここでは設備設計の業務の流れについて解説します。

発注元の要望の聞き取り

設備設計の仕事は発注元の要望の聞き取りから始まります。
その空間がどういった用途でどの程度の人数を想定したものにするのか、などを詳しく聞き取りを行い、予算内で最も快適な空間に出来るよう発注元のイメージを汲み取っていきます。

基本設計の作成

基本設計とは、発注元からの要望を吸い上げた結果を形にしてイメージが湧きやすくするために行う基本的な設計です。
その建築物で使用するトイレや照明、エレベーター機器などの設備内容を検討していきます。
電気容量計算や換気計算などを行い検討します。

実施設計の作成

基本設計を基に発注元とすり合わせを行い、双方納得のいく内容まで調整をします。
それが終われば、基本設計で提案した設備機器などの最終決定やどういった配管、配線ルートをするのかを検討し作図を行います。
この設計図を実施設計と言います。

積算

設計図が完成したあとは、施工業者が施工予算を決めるための積算を行います。
使用する設備機器の数量、配線、配管の長さなどを算出し、施工業者と施工予算を考えていきます。

施工監理

施工予算が決まればいよいよ着工です。
着工後は施工業者、発注元との定例打ち合わせなどで、進捗や品質の確認を行い、竣工までを監理していきます
施工業者の施工管理とは違います。

設備設計の年収

設備設計の平均年収は約450〜550万円となっており、月に30〜45万円程度の給与が平均です。
初任給は約20万円となっており、他の職種と大きく変わることはありません。

年代別や地域別などで分けてみます。

年代別に見てみると20代では450万円、30代で500万円、40代で630万円、50代で650万円程度となっています。
やはり設備設計は専門的な知識と経験がとても重要となるため、年齢を重ねるごとに年収もアップしていることが分かります。


地域別では関東が最も高く約470万円となっており、最も低い北海道・東北、九州・沖縄と比べおよそ70万円の差がついています。

関東の中でもやはり東京が最も高く約540万円です。

年収を上げるには

設備設計で最も早く年収を上げる方法は、ずばり転職をすることです。
今の年収よりも更に高い年収を提示してもらえる企業へ転職することで簡単に年収を上げることが可能となります。

特にこの業界はハウスメーカーや大手ゼネコンなどに転職することで平均年収が約100〜200万円程アップすることもあります。
ある程度のスキルと実績を積んでいる状態であれば、転職のチャンスはあります。
また大手企業などへ転職をするメリットは年収の他にも業務量が現在勤めている企業よりも減る可能性もあります。
中小企業などでは日々人手不足に悩まされ、ほとんど全ての業務を一人でこなさなければならない状況であることが多くあります。
しかし大手企業などでは人材も豊富のため、業務の細分化を図ることが可能で集中してひとつの業務に取り組むことが出来る場合もあります。

求められる資格

設備設計を行う上で必要な資格について解説します。
設備設計の業務を行う上では、必要な資格というものはありませんが、これらの資格を取得すれば転職の際にも有利になります。

一級建築士

一級建築士は正式な設計図書を作成する上で必要な資格です。
主に意匠設計や構造設計などに精通している資格と思われがちですが、設備設計を行う上でも重要な資格です。
合格率の低さから資格取得難易度は非常に高い分、転職の際も有利に働きます。

設備設計一級建築士

設備設計一級建築士とは、平成18年12月より創設された比較的新しい資格で、一定の規模以上(3階建て以上でかつ床面積の合計が5,000平方メートル以上)の建築物の設備設計を行う際に必要です。
近年の設備の複雑化に伴い、より専門性が必要になったことから創設された資格であり、前述した一級建築士の上位資格とも言われています。
受験資格は一級建築士の有資格者で、かつ5年以上の設備設計の実務経験が必要であることから取得難易度は非常に高いです。

建築設備士

建築設備士は設備設計を行う際に必ず必要な資格というわけではありません。
しかし、建築設備に対する助言を権威をもって行うことが出来る、建築設備に精通している証明のような資格であり、設備設計を行う上で非常にアピール力の高い資格です。
建築設備士の有資格者の在籍は企業評価が上がることにも繋がるため、転職の際にも有利です。

技術士

技術士は建築設備士と同じく設備設計と直接的に関わりのある資格ではありません。
「建設部門」の技術士の資格は、建設分野における高度な知識と経験を有している証明となり、権威性は一級建築士と同程度です。
設備設計においても有利であることは当然、その後のキャリアにも役立つ資格と言えます。

求められる知識

設備設計の仕事は建築物に対し、インフラ整備の設計を行うことです。
それを行う上で必要な知識とはどういったものなのでしょうか。

設備についての知識

当然ですが、設備設計を行う上で設備についての専門的な知識は必要不可欠です。
給排水設備、電気設備、空調設備、ガス設備、上下水道処理設備などはもちろん温泉施設や工場、ホテルなど特殊な用途の建築物であれば更に専門的な知識が必要となります。
設備設計は資格がなくとも業務に携わることが可能ですが、相応の学びは必要ですので、学びの過程で先述の資格を取得出来る程度の知識は身に付きます。

建築についての知識

設備設計は設備についての知識だけではなく、建築に関する知識も身につけなければなりません。
建築知識がない状態で設備設計を行えば、意匠性を損なうことや配管ルートに脆弱部が出来てしまい数年のうちに崩壊を招いてしまう可能性もあります。
建築に関しての正しい知識を持ち合わせ、意匠設計、構造設計との折り合いをつけながら設計を行うことが必要です。

環境についての知識

設計はあくまで机上論です。
実際に建築物が出来上がるまでは本当に求めていた性能が発揮出来ているかを確認することは出来ません。
建築物は例え同じものをつくったとしても、建設地の違いにより性能に差が出ます。
山間部であれば配管が凍結しないための工夫が必要であり、沿岸部では腐食に対する処理が必要です。
環境に対する対策を施す知識も必要です。

主要設備設計事務所3選


ここからは大手設備設計事務所と言えばどこなのか、主要設備設計事務所について3つほど紹介します。

株式会社日建設計

日建設計は設備設計のみならず設計事務所全体としても最大手の会社です。
厳密には日建設計は設備設計事務所ではなく、組織設計事務所と呼ばれ、意匠・構造・設備全ての設計を1社でこなすことが出来る企業です。
資格者数は一級建築士が約880人、設備設計一級建築士が約60人在籍しています。
事業内容は建築設計全般のほか都市開発なども行っています。

株式会社総合設備コンサルタント

資格者数は一級建築士が31名、設備設計一級建築士が18名在籍しています。
1974年に創立し、北は北海道、南は沖縄まで幅広く事業所を展開しています。
事業内容は設備設計全般および航空保安施設の設計、監理なども行っています。

株式会社蒼設備設計事務所

蒼設備設計事務所は1965年創設の設備設計事務所です。
資格者数は一級建築士3名、設備設計一級建築士が3名在籍しています。
事業内容は電気、空調、給排水の設備設計がメインですが蒼設備設計事務所の強みは、運用後の管理業務を行う点です。
実際建設コストの何倍も掛かる維持管理コストに焦点を当てて中長期の運用計画などを提案しています。

設計事務所は激務?

ネットなどを見ると設計事務所は激務であるいう内容をよく目にします。
結論は抱えているプロジェクトの数によると言えます。
プロジェクトの数が多ければ毎週のように図面や模型やパースなどの納期に追われることもあり、毎日夜遅くまで仕事をしなければならないといった状況になりやすいです。
しかし、そのような状況が多くある訳ではないので常に夜遅くまで残業をするといったことはないようです。
建設業は働き方改革の適用外ではありますが、世間の意識も変わってきつつあり、土曜休日がほぼ当たり前になってきています。

以上のことから忙しいときは忙しいですが、そうでない時も多々あるためそこまで激務とは言えません。

設備設計の将来性

設備設計に興味はあるが将来性があるか気になる方もいらっしゃるのではないでしょうか。
設備設計は今後ますます需要が増え、将来性がある仕事であると言えます。
一昔前まで設備設計は意匠設計の一部としか捉えられていなかったですが、近年はその重要性が見直されています。

その理由の1つとして、「建築物省エネ法」の施行が挙げられます。
建築物省エネ法は2015年に施行された法律で、省エネに配慮していない建築物を建ててはいけなくなりました。
結果、環境に配慮した建築物の設計には設備設計の役割がとても大きく関わってくるため、とても重要な立ち位置となったのです。

またLANケーブルやloT技術との連携など、これまでの古い建築物には存在していなかった情報系の設備を改修工事などの折に増設をしなければならない工事も増えてくるでしょう。
これらを考慮すると設備設計の需要は今後ますます増えていくことが予想されます。

まとめ

今回は設備設計について解説しました。
昔の建物は配管などがむき出しになっていることが当たり前でしたが、最近の建物は出来る限り見えなくなっています。
これは設備設計が意匠性を考慮した結果であり、こういったところからも設備設計の発言力が強くなってきたことが伺えますね。
建築設備の最上流である設備設計、とてもやりがいのある仕事です。

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