ヒヤリハットとは?建設業の事例10選、報告書の書き方についても解説!

建設現場において耳にする「ヒヤリ・ハット」とは、作業者のケガや大きな事故を発生させないために未然に防いでいく事例のことを指します。
各施工現場においてどういった事例があるか、そして対策はどうすべきかを踏まえて報告書の書き方も紹介します。
安全な現場作りのためにもヒヤリ・ハットの事例の再発防止に努めていきましょう。

ヒヤリ・ハットとは


建設業における労働災害と言えば、足場から落下する高所作業の事例や、重機などの転倒による巻き込まれ、資材搬入における激突といった事例などがあります。
そんな中、大きな事故には至らなかったものの、焦って背筋がヒヤリとしたことのある人は多いでしょう。
働く者の労働災害を減らすためには、ヒヤリ・ハット」した際に事故への危険を認識して芽を摘むことが大切です。

ヒヤリ・ハットとハインリッヒ

1件の重大事故の背景には29件の軽微な事故があります。
それに対しヒヤリとした、あるいはハッとした事例が300件あり、この割合を「ヒヤリ・ハットとハインリッヒの法則」と言います。
つまり、重大事故の割合を減らすには、ヒヤリ・ハットの事例の再発防止が求められます。

ヒヤリ・ハットの事例10


現場で作業中に危うく大きなケガや事故になりかけたヒヤリ・ハットの事例にはどういったものがあるのでしょうか。
各分類ごとに具体的な作業状況を踏まえた事例を10個紹介します。

事例1 転落・墜落

建物の吹抜部における梁の型枠の作業時と転落に関するヒヤリ・ハットの事例を紹介します。
高所に型枠があったためローリング足場を使用しましたが、手を伸ばしてやっとの距離でした。

そのため、足場から体を乗り出して作業をした際に、ハンマーで釘を打とうとしてバランスを崩し、高所から転落しそうになりました。

可動式のローリング足場を適切な場所に移動することや、姿勢を崩さず作業ができる環境を整えることが大切です。

事例2 転倒・激突

スラブの解体時においてチェーン式解体を採用し、チェーンを真っすぐ引っ張ったことで顔に当たりそうになったという激突の事例がありました。
一歩間違えれば失明の可能性もある重大な事故に発展します。

チェーン式解体時においてチェーンは斜めに引っ張る必要があったため、道具類の使用についてはしっかり確認する必要があります。

事例3 飛来・落下

資材搬入者が4メートルの鋼管を2本担いで歩いている際に、床にあった開口養生蓋を踏んでバランスを崩してしまい、鋼管を落としそうになったという事例があります。

長い鋼材や重たい資材などを運ぶ際にはバランスを崩しやすいため、歩行ルートを確認してから運ぶ必要があります。

事例4 崩壊・倒壊

重機使用による倒壊の事例です。
資材を120tクレーンで荷揚げした際にワイヤーがファブデッキの鉄筋に引っ掛かかったことで、ファブデッキが持ち上がった事例があります。

本来ならばワイヤーなどが引っかからないように養生する必要がありました。
クレーン使用時には重機自体が倒れるという事例もあるため、周囲などの状況をしっかり確認しなければいけません。

事例5 激突され

内装工事における長尺シート搬入時に、作業通路のコーナーを曲がろうとした際に反対から来た作業員と衝突しそうになった事例があります。

曲がり角は視野が行き届かないことが多いため激突され」の事例を防ぐためにも、搬入通路の確認や積極的な声掛けが必要です。

事例6 挟まれ・巻き込まれ

床材を台車に積んで運んだ際に、止めた場所に傾斜があるのに気付かず台車が動いて人が巻き込まれる事例がありました。

重い資材と人がぶつかればケガにつながり、台車に載せている物が危険物の場合は事故に発展するため台車の固定は大切です。

事例7 感電・火災

長尺シート巻き上げ作業において速乾ボンドを塗布した後、近場で作業していた床仕上業者のタッチファイヤーの火が、ボード下を通って長尺シートに引火した事例があります。

内装工事でもこうした火災のヒヤリ・ハットがあるため、気を付けなければなりません

事例8 切れ、こすれ

型枠の取付け作業中にセパ位置をずらそうと型枠内のセパを握って、もう片方の手で電動ドリルを持って貫通させようとしました。
その際に電動ドリルの位置を見誤って、指を切創しそうになる事例がありました。

他にも丸のこを使用してベニヤを切断した際にも似た事例があり、電動工具は一歩間違えれば大けがを負う可能性があると認識する必要があります。

事例9 有害物との接触

配管工事作業で廃液処理場の地下ピットにて有害ガスが蔓延していました。
それに気付かずに作業者が入りそうになり、死傷者が発生しかけたというヒヤリ・ハットの事例があります。

他にも、配管の調査や切断時に中の気体や流体が噴出した事例もあるため、危険物や有害物が作業者を脅かす可能性があることを認識する必要があります。

事例10 その他

その他の事例の代表的なものとして熱中症があります。
猛暑日に瓦葺き作業をし、途中で体が軽い痙攣を起こしたことで異常を察した作業員がいました。
その後、周囲の作業員に手を借りて病院に行き、熱中症だという診断を受けました。

少しの異常でも身体を第一に考えて休憩などをする必要があり、互いに声を掛け合って体調に問題がないか確認するのが大切です。

ヒヤリ・ハットの対策10


ヒヤリ・ハットの事例を紹介しましたが、より具体的な対策について考えてみましょう。
今回はヒヤリ・ハットに多い転倒や転落などに繋がる事例の対策を中心に紹介しますが、どういった事例があるのか常に情報に耳を傾けて再認識することが大切です。

対策1 重機とオペレーター

クレーンなどの重機は不安定な足場や強風時に煽られて転倒したり、アームが周囲の資材に干渉して崩落したりする事例があります。
大きな事故を起こさないためにも重機使用時には周りへ配慮し、作業時のオペレーターは周囲の状況を把握した上で適切な合図をする必要があります。

事故防止のためにも配慮を怠らないという意識を持つのが対策として挙げられます。

対策2 作業時の足場

作業者が作業をする上で足元が不安定であることに気付かず、転倒する事例も多いです。
そのため、足元を目視で確認するだけでなく、足場板がしっかり配置されているか、フラットな状態かを確認してから作業を始めましょう。

対策3 整理整頓の徹底

作業時に使った工具を出しっぱなしにしたり、木くずなどの細かな粒子が床に散らかったままだと、つまづいたり滑ったりする可能性があります。
そのため、使用済みの道具の片付けや掃除といった整理整頓を徹底することが大切です。

現場で徹底している5S整理整頓清掃清潔)の重要性は常に意識すべきでしょう。

対策4 天気と事前行動

雨で足元が濡れたことによる転倒や、屋根の上から転落するという事例があります。
また、作業中に雨が降ってから作業を止めようとすると、滑りやすくなっているのに気付かないこともあります。

そのため、天気を事前に把握するようにし、転倒・転落などが無いように周りと声を掛け合うことも対策として挙げられます。

対策5 安全帯と高所作業

高所作業時などにおいて安全帯が必要な際には使用の徹底が必要です。
「これくらいの高さなら大丈夫」という認識や、手すりがあれば安全だと考える作業員も少なくありません。

現場監督が率先して声を掛けたり、安全帯の大切さを再認識しましょう。

対策6 転倒と道具について

脚立立馬の利用を適切に行わなかった為に転倒転落することも多いです。
そうした対策のために、周囲の環境や作業状況に合わせた道具を選ぶ必要があり、脚立の開き止めのセットもしっかりする必要があります。

また、同じ作業を続けていると多少の高さの変化があっても、脚立を使い続けたいという場面が出て来るでしょう。
その際には今一度、考え直すことが大切です。

対策7 火器の扱いについて

作業スペースが狭かったり、密接した状態での作業時においてガスバーナー等の作業は注意が必要です。
塩ビシートなどの床材を張る際の接着剤、天井のグラスウールなど引火する可能性がある物が周囲に無いか確認することで火災への対策に繋がります。

対策8 搬入経路の確認

搬入経路の確認時には作業通路を確保や、何時頃に搬入をするのかという周知が大切です。
そのためには朝礼、昼礼時に現場監督が作業員に周知し、動線の確保ができているかや資材の整理整頓の状況の確認します。
搬入の作業員は積極的に声を出して曲がり角での衝突などを防ぐといった対策が必要です。

対策9 足元の確認

作業場の移動時にも足元への注意を怠らないようにしなければなりません。
いつも通る施工箇所であっても、予期しないものが置いてあったり、滑りやすくなっていたり、段差が見えづらかったりと様々なことが考えられます。

特にヘルメットをかぶっていると周囲を見回すのが大変な場面や、視界が狭くなりやすいことから意識するようにしましょう。

また、見えづらい段差などには蛍光テープでバミリをして視認性を高めるのも対策として挙げられます。

対策10 暑さ対策

夏場の猛暑日における日照や輻射熱による陽射しの暑さ、温度と共に湿度が高くて発汗性が悪くなる際には特に熱中症対策が必要です。

小まめな休憩のためにも日陰のある休憩所には扇風機や冷房、クーラーボックス入りの冷凍スポーツドリンクなどを用意しましょう。
水分や塩分の補給は特に大切であり、パラソルとスポットクーラーや作業場用大型扇風機を組み合わせるのも効果的です。

作業者は体調管理を徹底して少しでも身体に異常を感じたら休むようにし、現場監督は作業者の様子を確認するためにもパトロール時には意識しておくのも対策の一つです。

ヒヤリ・ハットの報告書


ヒヤリ・ハットの事例が起きたら社内で共有して同じことを繰り返さないように努めなければいけません。
また、国土交通省の取り組みとしてヒヤリ・ハットの事例を鉄筋、型枠、とび、屋根、内装仕上工事において500件の調査票を回収したという例もあります。

ヒヤリ・ハットの事例を積み重ねると大きな事故に発展してしまうことを認識した上で、報告書の書き方を紹介します。

報告書の役割

ヒヤリ・ハットの事例を会社ごとにまとめておき、朝礼などで定期的に呼びかけることでそれぞれの現場で共有できるようになります。
また、ヒヤリ・ハットの事例が起きた原因や「崩落・転落、激突され」といった事故の型も分類わけしておくことで、どのような事故が多いのか集計しやすくなります。

各現場で同じような事例が多いことがわかったり、現場で特に注意すべき点がわかったりするため報告書の大切さを認識する必要があります。

報告書の書き方

ヒヤリ・ハットの報告書には以下の5つを記載し、必要に応じて作業状況の図を書いておくと良いでしょう。

  • 年齢(10~60代から選択)
  • 経験年数(1年未満、1~3年、3~5年、5~10年、以後10年単位から選択)
  • 事故発生日時、場所、作業内容
  • 状況(どのような作業で → 何をしていて → どうなった )
  • 再発防止や改善策

まとめ


作業者にとって「当たり前」の作業などヒヤリ・ハットの事例につながり、その積み重ねが大きな事故に発展します。
そのため、定期的に現場や道具についての確認事項を認識し、気を引き締めることが大切です。

現場監督や周囲の者たちの声の掛け合いも有効なので、対策を怠らず、安全な現場進行を目指しましょう。
他にも、吉本興業グループと共に建設現場の事例を題材としたヒヤリ・ハット講習「おうちクラブの事例から学ぶ!ヒヤリ・ハット講習~建設現場はヒヤリとしてハッとすることがいっぱい~」を国土交通省は公開しています。
動画で確認するとさらに理解が深まりますので、そうした講習も利用し、重大事故の減少に努めましょう。

参考)おうちクラブの事例から学ぶ!ヒヤリ・ハット講習~建設現場はヒヤリとしてハッとすることがいっぱい~ https://www.mlit.go.jp/page/kanbo01_hy_005547.html

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