玉掛けとは?作業内容や必要資格は?事故例や注意点など解説!

現場で重量物を移動させる場合、人力では非効率のため、クレーンなどの重機の力を使います。
その際にクレーンのフックに荷をスリングと呼ばれる専用のヒモ材などで掛けたり、外したりする作業のことを「玉掛け」と言います。

今回は玉掛けについて作業内容や必要資格など徹底解説します。

その他事故例や注意点などについても紹介します。

玉掛けとは?

玉掛けとは、主に建設現場や工場などで行われる作業の1つで、人の力では到底持つことのできない重量物や、たくさんの荷を持ち上げる場合、クレーンで持ち上げることが一般的です。

その際にクレーンのフックに建材や部材をスリングと呼ばれる玉掛け用工具やワイヤーなどを用いて引っ掛けたり、外したりする作業のことを「玉掛け」と言います。
玉掛けを行うには資格が必要であり、無資格者が玉掛けを行うことは禁止されています。

玉掛けの作業内容

玉掛け作業はひとつの作業ではなく一連の作業です。
今回はいくつかのステップに分けて解説します。

  1. クレーンを呼ぶ
  2. 玉掛け
  3. 地切り
  4. 巻き上げ
  5. 降ろす

1.クレーンを呼ぶ

クレーンのフックを玉掛けをする対象物の真上までくるよう、合図により誘導します。
この時の合図は一人で行い、クレーン運転者がよく分かるように大きな動作で行います。

2.玉掛け

クレーンのフックにスリングワイヤーなど用いてつり荷に掛けます。
掛け方はつり荷の形状に適した掛け方で行います。

3.地切り

玉掛け後、30cm地切りをし、つり荷が安定しているのかを確認します。
この際、3秒間はそのまま停止させ、安定が確認できたらつり荷から3m離れ巻き上げ合図を行います。
この一連の流れを3・3・3運動と呼びます。

4.巻き上げ

地切りを行ったあとにクレーン操縦者へ巻き上げ開始の合図を行います。
巻き上げ時は、介添えロープと呼ばれるつり荷に掛けた長めのロープを掴み、つり荷の回転を抑えます。
また、つり荷の下に他の作業員を立ち入らせないように区画などを事前に行う必要があります

5.降ろす

吊り荷の真下に入らないよう注意し、クレーン操縦者に降ろすポイントを合図にて指示を出します
地面が近づいてくるにつれ、クレーンの巻下げを小さくする微動巻き下げの指示に切り替えます。

玉掛け作業に関する事故例

玉掛け作業には危険が多くあります。
平成18年から平成27年までの10年間に発生した玉掛け作業に関連する死亡災害は332人となっています。

そのため、知識を有していないものの玉掛け作業は禁止されているのです。
ここでは玉掛け作業に関する事故例を2つご紹介します。

事例1

  事例 天井クレーンでつった荷の玉掛け用具が抜けてつり荷が落下し被災
  業種 金属加工機械製造業
  被災 死亡1名
 あらまし ホイスト式天井クレーンにより、ディスクブレーキ板(重さ423kg)をつり上げ、その真下で被災者がボルト締め作業をおこなっていたところ、
ブレーキ板に取り付けた玉掛け用金具の1本が抜けたため、ブレーキ板が落下、被災者を直撃した。
当日、被災者Aは現場責任者であるBと作業をしていた。
最初の作業として、二人で28箇所あるボルト穴の大半を仮締めし次に,仮締めしたボルト穴の反対側を上にしてから、アイボルトの代用品としてT 字型の玉掛け用具2本を対角線上になるように深さ約20mm 程ねじ込んだ。このT 字型玉掛け用具は,当現場に準備されていたアイボルトの寸法がディスクブレーキの穴に合わなかったため、B が現場でディスクブレーキ板結合用のボルト2本をT字型に溶接して作成したものである。A はそのT字型玉掛け用具にワイヤロープのアイを掛け、その中央をクレーンフックに半掛け状態で玉掛けした後、
自分で定格荷重2.8t のホイスト式天井クレーンを操作して床上約1.2m の高さまでつり上げた。その後、B は、つり上げられたディスクブレーキの真下に体がはいるようにA をかがみ込ませて、
インパクトレンチでボルトを本締めする作業をさせた。
Aがボルトの本締め作業を行っていたところ、突然ディスクブレーキ板にねじ込まれていた2本のT 字型玉掛け用具のうち1本が抜け落ち、
ディスクブレーキ板が落下し、真下で作業していた被災者が胸部を打撃されると共にその下敷きとなった。
災害後本締めボルトと玉掛け用具は同じボルト穴上下からにねじ込んであったことが確認された。なお,T 字型玉掛け用具をねじ込んでいるディスクブレーキ板の下面のボルト穴にはボルトをねじ込むことを防止するための印などは付けていなかった。
また,本件作業においては,A,B 共にクレーンの運転資格及び玉掛け者の資格を有していなく,Aは雇い入れ時の安全教育も受けていなかった。

出典:一般社団法人日本クレーン協会http://www.cranenet.or.jp/cszirei/cr92041.html

事例2

  事例
玉掛けワイヤロープが切断し荷が落下
  業種 建設業
  被災 死亡1名 重傷1名
 あらまし 建設業を営む事業場の資材置き場において発生したものである。
災害発生当日、被災者ら5名はビル建築工事現場で使用する杭打機を運ぶため、大型トラック2台に杭打機の部材,部品を積み込む作業を行っていた。
積み込みは、つり上げ荷重35tのクローラクレーンを使用し、1台目のトラックに杭打機のリーダー、敷板等を積み込んだ後、2台目のトラックに杭打機のステーを積み込むこととした。ステーは2本を分割したものが4本あったが、
4本目のステー(長さ約14m,重量約1t)をトラックに積み込むとき、ステーの上下が逆であることに気づき、ステーの中央部に両端アイの玉掛け用ワイヤロープ(径12mm,切断荷重約8t)1本を用いてアイにロープを通して玉掛けし、ステ一を少しつり上げた状態で、被災者らがステーを回転させて上下を反転した。3本目までのステーはワイヤロープ2本を用いて4点づりで玉掛けし、積み込みを行ったが、この4本目は玉掛け位置が重心から外れて不安定な状態にあり、また、ステーの前後の向きが反対であったことから、
トラック荷台上に移動させる前に何回か巻上げたり、方向を変えるなどの作業を行った。
その後、ステーをトラック荷台上に移動させていたとき、玉掛けワイヤロープが突然切断しステーが落下、下にいた被災者に激突した。

出典:一般社団法人日本クレーン協会http://www.cranenet.or.jp/cszirei/cr92041.html

玉掛けの際の注意点


事故事例を紹介しましたが、玉掛けする際の注意点を守ることで上記のような事故は防げていたのかもしれません。
玉掛けの際の注意点について解説します。

注意点1 つり荷の重心を見極める

さきほどの事故事例でもありましたが、必ずつり荷の重心に玉掛けの中心をもってこなければいけません
重心を誤って玉掛けを行った場合、つり荷は必ずバランスを崩し、どちらかに傾きます。

傾くことでつり荷が棒状のものであればそのまま滑り落ち落下や、玉掛け用具に無理な力が掛かり、用具自体の劣化を早め用具の破損によるつり荷の落下などが発生する恐れがあるためです。

重心を見極めるには経験が必須となります。
経験が浅い方が玉掛け作業を行う際は経験豊富な方と行う必要があります。

注意点2 つり荷の下には絶対に立ち入らない

玉掛け作業で最も危険な場所はつり荷の下です
事故事例でもつり荷の真下にいることでそのまま落下したつり荷の下敷きになるなどの件数が多くあります。

経験が浅いうちはついついその場でつり荷を見上げたままになり、いつの間にか、つり荷の直下になっていた、などということもあります。

玉掛けを行い、地切りを行ったあとは、必ず3m以上は離れるようにしましょう
また、周囲の人がつり荷の下にならない工夫も必要です。

注意点3 玉掛け用具の点検を怠らない

玉掛け用具も何度も使用を繰り返したり、月日が経ったものなどは劣化していきます。
重量を受ける部分のため、玉掛け用具の点検は重要です

劣化や破損に気づかず玉掛け作業を行えば、破断によるつり荷落下が発生し得ます。
玉掛けを行う前には必ず玉掛けワイヤに形崩れ、素線切れ等の損傷はないか、などの点検を行うことを癖づけましょう。

玉掛けの資格


玉掛けを行う場合は玉掛けの資格を有しているものでなければ、その作業に従事することはできません。
玉掛け作業の危険性はここまでの説明で分かって頂けたと思いますので、ここからは玉掛けの資格について解説します。

玉掛け特別教育

玉掛けを行うための資格です。
この資格は制限が設けられており、クレーン等のつり上げ荷重が1トン未満の玉掛け業務のみ従事することが出来る資格です。

取得には重機などを取り扱っているメーカーなど登録教習機関で実施されている講習を受講することで取得出来ます。

日数2日間で学科講習で5時間実技講習で4時間の講習内容となっています。
費用は受講する教習機関などにも寄りますが平均して15,000円程度となっています。

しかし、日本において1トン未満のクレーンなどがあまり普及していないため、それほど需要がある資格ではありません。

玉掛け技能講習

こちらも玉掛けを行うための資格です。
特別教育ではクレーン等のつり上げ荷重は1トン未満でしたが、こちらはクレーン等のつり上げ荷重が1トン以上の玉掛け業務に従事することが出来ます。

玉掛け特別教育の上位資格と言えます。
玉掛け技能講習の内容については下記で詳しく解説します。

玉掛け技能講習について

受講資格

受講資格は18歳以上であれば誰でも受講することが可能です。

講習内容

日数3日間で学科講習12時間実技講習7時間の上学科、実技それぞれに修了試験があり、合格しなければ修了することが出来ません。
しかし、落ちることは稀であり、そこまで難しい試験ではありません。

  学科 クレーン等に関する知識 1時間
クレーン等の玉掛けに必要な力学に関する知識 3時間
クレーン等の玉掛けの方法 7時間
関係法令 1時間
  実技 クレーン等の玉掛け 6時間
クレーン等の運転のための合図 1時間

費用

登録教習機関にも寄りますが20,000〜26,000円程度です。

その他

資格取得後、おおむね5年ごとに再教育が必要となります。
修了証の修了年月日が5年を超えている場合は、玉掛け作業に従事出来ませんので、必ず再教育を受けるようにしましょう。

講習時間は学科のみで5時間の講習内容です。

玉掛けの合図


玉掛け作業はクレーン付きトラックなどで一人で行う場合を除きクレーン運転者との共同の作業となる場合が多いです。

クレーン運転者へ玉掛け合図の意思を伝える手段として手による合図が普及しています。
クレーン等安全規則に則って定められた全国共通の合図のため、例え初対面であったとしても意思の疎通が取れます。

  • 呼び出し
  • 巻上げ
  • 巻下げ
  • 水平移動
  • 微動
  • 停止

他にも種類はありますが、手による合図だけでクレーンをどこにどうしたいのかを的確に伝えることが出来ます。

手による合図の他、見通しの悪い場所での玉掛け作業や、高所での玉掛け作業の場合は「声による合図」などもあります。

まとめ


今回は玉掛け作業について解説しました。建設業に入ったらまずは持っておきたい資格としても知られています。

玉掛け作業は作業自体はとても単純ですが、事故例も多い、大変危険な作業です。
有資格者の作業が原則なことはもちろんのこと、少しでも不安であれば必ず一度止まって、再度確認を行い、不安要素を摘み取っていくことが重要です。

この記事が玉掛け作業の正しい理解に繋がって頂ければ幸いです。

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