令和元年から「電気通信施工管理技士」の資格試験が始まっています。
電気通信施工管理技士は、建築工事や電気設備工事、機械設備工事などと並んで建物や構造物などには欠かせないインフラとなっている通信設備に関する施工管理業務を行います。
通信基地の工事や建築物の通信設備などは、現代ではインフラ設備に分類される工事内容になりますので、不具合のないように施工管理することが求められています。
この記事では、1級電気通信施工管理技士試験の難易度や仕事内容について解説していきます。
電気通信施工管理技士の仕事内容とは
施工管理技士の資格ではこれまで、建築機械・土木・建築・電気工事・管工事・造園の6つの分類に分かれていました。
2019年に30年ぶりに新設された分類が電気通信になります。
電気通信施工管理技士の資格を取得することで、建設業法上に規定されている営業所の専任技術者や、電気通信として主任技術者または監理技術者として工事に従事することが可能になります。
2級取得者では監理技術者にはなれないため、1級の取得者がより重宝されています。
公共工事を受注する際に提出している経営審査事項に技術者として記載することができますので評点が上がっていきます。
1級電気通信施工管理技士試験について
1級電気通信施工管理技士試験は、第一次検定と第二次検定に分かれています。
また、1級と2級があり、1級電気通信施工管理技士が2級の上位資格として存在します。
2級では主任技術者として工事現場での工事監理を行いますが、1級では監理技術者として施工管理業務を行うことが可能となります。
受験資格
1級電気通信施工管理技士の受験資格は学歴や持っている資格、実務経験によって与えられます。
第一次検定では、学歴と合わせて指定された学科を卒業している方は卒業後の実務経験の年数が少ない状態で試験を受けることができます。
大学や短大・高専、高校と卒業した学歴についての規定があります。
また、その他の方でも実務経験があることで受験資格はもらえます。
2級電気通信施工管理技士の第二次検定に合格した方にも受験資格はあります。
第二次検定では、第一次検定合格者や技術士法に合格されている方などに受験資格が付与されています。
第一次検定
学歴 | 実務経験 | |
指定学科 | 指定学科以外 | |
大学 | 卒業後3年以上 | 卒業後4年6ヶ月以上 |
短大・高専 | 卒業後5年以上 | 卒業後7年6ヶ月以上 |
高等学校 | 卒業後10年以上 | 卒業後11年6ヶ月以上 |
その他 | 15年以上 | |
電気主任技術者 | 6年以上 | |
2級の第二次検定合格者 |
第二次検定
学歴 | 実務経験 | |
指定学科 | 指定学科以外 | |
2級第二次検定合格後3年以上 | 合格後、指導的立場の監理技術者による指導2年を含む3年以上 | |
2級第二次検定合格後5年以上 | 合格後5年以上 | |
2級第二次検定合格後5年未満 | 卒業後9年以上 | 卒業後10年6ヶ月以上 |
第一次検定合格者 | ||
第一次免除者 |
試験内容
試験科目は、第一次検定では、電気通信工学等・施工管理法・法規の3つがあります。
電気通信や電気、建築、土木、機械などに関する知識や通信の専門知識、設計図書に関する知識があります。
合わせて、施工計画の作成方法や工程管理、品質管理、安全管理等の管理方法の知識を必要としています。
工事現場にて監理技術者として管理するための知識があるのかの試験です。
第二次検定では施工管理法に関する知識と能力の試験になります。
監理技術者や主任技術者として設計図書から要求されることを理解して施工図を作成できるのかの試験になります。
第一次検定 | 電気通信工学等 | ・電気通信・電気・機械・土木・建築に関する知識 ・有線・無線・放送設備に関する知識 ・設計図書に関する知識 |
施工管理法 | ・施工計画の作成や工程管理、安全管理等の知識 | |
法規 | ・建設工事に必要な法規の知識 | |
第二次検定 | 施工管理法に関する知識と能力 | ・監理技術者や主任技術者としての施工管理の知識 ・設計図書に記載してある要求を正確に施工図にして現場内での手配等を行う能力 |
合格率と難易度
合格率は令和元年の1回目が学科試験が49.1%、実地試験の合格率が49.3%となっています。
令和2年の試験では、学科試験が43.1%、実地試験が49.5%となっています。
合格率は学科試験・実地試験ともに半分程度の方は合格しており、特に難易度の高い試験というわけではありません。
4割弱の合格率しかない試験もあることから、電気通信工事の施工管理における人材を早急に増やしていく必要があるのではないでしょうか。
取得までの流れ
今までの1級電気通信施工管理技士の資格試験では、2級の第二次検定の合格者が1級の第一次検定を受験する際には受験資格要件がなくなっています。
第二次検定を受験する場合には実務経験が合格後5年以上の実務経験が必要になります。
今までは「電気通信工事」の専任技術者となるためには難易度の高い技術士試験や、取得後5年以上の実務経験が必要な「電気通信主任技術者」だけが選択肢でした。
そのため、電気通信工事の専任技術者となるためには事実上、10年以上の実務経験が必要になることが多くなっていました。
電気通信施工管理技士資格が新設されたことにより、必要な実務経験の年数が短縮されることになるため、多くの有資格者が現場で活躍することが期待されています。
1級電気通信施工管理技士を取得するメリット
1級電気通信施工管理技士は歴史の長い資格ではないため、資格保有者の数がまだ比較的少ない状況があります。
貴重な存在である1級電気通信施工管理技士は社内外で優遇され、重宝されます。
具体的にどのようなメリットがあるのか確認していきましょう。
通信が重要な時代のため需要が高い
現在はインターネット社会であり、情報インフラ整備が大きく進んでいます。
通信網の構築や建物に関する情報化などの多くの工事において、技術者の確保が課題になっています。
合わせて、正しく施工されているのかや工程管理、安全管理などの施工管理を行うことができる技術者を育成する必要があります。
施工管理を十分に行えないと、建築工事や土木工事などのその他の工事にも悪影響が出るため、電気通信工事に関する施工管理技士を置くこととなっています。
監理技術者や主任技術者
1級電気通信施工管理技士は工事単位で必要になる監理技術者や主任技術者になることができる資格です。
4,000万円以上の下請け契約を受注して工事現場に入る際には、必ず監理技術者を専任で配置する必要があります。
そのため比較的大きな物件を受注する企業では技術者の確保が必要になります。
主任技術者は元請け工事、下請け工事問わず、監理技術者が必要な工事以外の全ての工事に配置する必要があります。
資格取得により多種多様な工事現場での経験を積むことができるため、キャリアアップにつながります。
転職やキャリアアップになる
通信工事が多く発注されている中で、新しい資格である1級電気通信工事施工管理技士の資格は転職市場では大注目の資格になります。
監理技術者や主任技術者の有資格者がいないと、会社として職人は確保できたとしても工事受注ができなくなります。
そのため、有資格者の確保は会社業績に大きな影響を与えます。
転職するだけではなく、社内での地位も高くなります。
1級電気通信施工管理技士の年収
電気通信施工管理技士の年収はまだ多くのデータが存在しません。
参考までの年収データにはなりますが、他の資格と比較して考えていきましょう。
2級電気通信施工管理技士との比較
一般的に電気工事施工管理技士の年収の相場は450万円から800万円ほどと考えられています。
そのため電気通信施工管理技士の年収も同程度と考えられます。
1級と2級での年収の差は資格手当として数万円から数千円の差になります。
それに加えて、資格保有によって社内での地位が向上し、基本給がアップすることも考えられます。
1級の資格保有者を抱えておくことで会社として受注できる範囲が広がります。
ある程度の給料アップなどの施策がないと流出の可能性も考えられるため会社として大事に確保しておくことが考えられます。
他の施工管理技士との比較
建築工事や土木工事、電気工事、管工事と年収を比較すると、電気通信工事はどうしても少なくなってしまうことが現実です。
電気通信工事は今までの電気工事の中でも通信に特化した資格であるため作業範囲が狭いと考えられています。
しかし、新しい資格のため工事現場内での序列や下請け金額などへの反映が遅れていることも考えられます。
今後の情勢では情報インフラを担っている工事であり、社会基盤構築のために下請け金額などについても上がってくることが考えられます。
他業種との比較
平均的な年収が400万円から500万円程度と言われているため、電気通信施工管理技士の年収は他の業種と比較すると低いとは言えません。
しかし、工事現場や社内などで情報インフラを担っている担当者としては不満を感じることもあるかもしれません。
他業種や他の工事会社と比較することも必要ですが、情報インフラを担っている電気通信工事でしか対応できない工事や施工管理を日々行うやりがいもありますので、今後はしだいに地位や給料が上がっていくと考えられます。
1級電気通信施工管理技士での転職事例
資格取得を機に小規模な会社から大規模な会社に転職したAさん
前職は中小企業であったため、資格保有にも関わらず、資格が必要ないような仕事ばかりをこなす日々でした。
そのため、大規模な会社に転職することで資格があるからこその仕事ができるようになりました。
忙しすぎたため他の資格保有者のサポートの厚い会社に転職したBさん
時間外労働も増え、忙しくてプライベートの時間も少なくなってしまっていました。
他の社員のサポート体制の整った企業に転職したことで、今では自分の仕事に集中することができています。
Uターンをする場合でも資格が有効だったCさん
1級電気通信施工管理技士の資格を活かして転職活動を行いましたが、資格保有によって簡単に候補を見つけることにつながりました。
希望する労働条件や地域などを選ぶことができていたので資格取得をしてよかったと思っています。
不安もあった中で資格保有していることで転職先の候補を絞ることも容易になりました。
前職で働く中で、時間のない中で選考を進めることもできましたので資格の有り難みを感じています。
まとめ
電気通信施工管理技士の資格は新設されたばかりの資格であるため、情報インフラを担う企業や通信工事を主に行う企業からは注目されている資格になります。
1級電気通信施工管理技士では営業所の専任主任技術者や工事現場の監理技術者となるための資格であり、通信工事を施工する企業には必要な人材です。
合格率は第一次検定と第二次検定ともに50%弱と他の施工管理技士と比較すると高めですが、新設されたばかりの資格特有の人材育成とも考えられます。
年収のデータはまだ少ないですが、地位向上を自らの手で掴むことができます。
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