建設業における施工管理の仕事は、とてもきつい仕事でありブラックだと聞くことが多いでしょう。
では、どのような点がブラックだと思われるのでしょうか。
本記事では、ブラックと言われる点とともに、ホワイトな企業で働くにはどのようにすれば良いか、施工管理の仕事のやりがいはどんなところなのか、などさまざまな視点で解説をしています。
施工管理とは
施工管理とは、建設現場において作業員の技術指導や、安全を管理する重要な役割を果たしています。
工事のスケジュールやコストなど、その管理業務は多岐に渡ります。
仕事内容
施工管理の仕事は、建設工事全体を管理し指揮する仕事です。
現場の職人たちを取りまとめ、工事の工程をコントロールし安全にも配慮する、非常に重要な仕事です。
施工管理において、最も重要とされる4大管理項目は以下の通りです。
・原価管理|建設工事にかかる予算、人件費や材料費などの管理を行う。
・工程管理|建設工事が完成するまでの、工事スケジュールの管理を行う。
・品質管理|建物が設計図面や仕様書の通りに施工できているか管理する。
・安全管理|建設現場や周辺、及び作業員の安全や工事の安全性を管理する。
上記の仕事内容からもわかるとおり、建設現場の作業が終わった後も業務があるため、非常に長時間労働になりやすく、世間ではブラックとされることも多い職業です。
施工管理がブラックと言われる理由7選
休みが少ない
施工管理がブラックだと言われる理由として、休みの少なさが挙げられます。
週休2日取れる現場は、いまだほとんどないといえます。
土曜日や祝日に関しては、現場が稼働しており施工管理は休むことができません。
施工管理の年間休日数は、およそ65日〜90日程度といわれています。
他業種では120日程度の年間休日数となっていますが、施工管理は30日以上休みが少ないのです。
残業時間が長く、サービス残業も多い
施工管理の労働時間は長く、残業はもちろんサービス残業が多いこともブラックといわれる理由となっています。
施工管理の仕事は、朝早くから現場に入り、現場作業が終わった後で事務所に戻りデスクワークの業務が始まります。
繁忙期になれば残業時間が100時間を超えることも珍しくありません。ともすれば残業時間が200時間を超えることさえあります。
施工管理の残業代は、みなし残業の制度を採用していることが多く、そのような場合は規定の残業時間を超えると全てサービス残業となります。
業務量が多い
先述の通り施工管理の業務時間は非常に長くなりがちです。
それは施工管理の仕事量、一人当たりの抱える業務量がとても膨大であるためなのです。
日中の現場作業では、作業員の安全や資材の搬入経路の安全確認、施工の品質確認や工程の進捗チェックなど、多くの業務を行います。
現場が終わった後には、コストの計算や検査予定のチェック、図面の変更箇所の修正や各種資材の発注や手配など、施工管理の抱える業務量は非常に膨大です。
労働時間と給料が見合っていない
施工管理の年収は、日本人の平均年収と比較すると高いです。
しかし、勤務時間の長さやサービス残業、休日の少なさなどを考慮した上で給与を換算すると、時間単価ではコンビニバイトの方が高額となることもあります。
施工管理の仕事は、一般的な会社員と比較して、2倍の仕事をして1.2倍未満程度の給与をもらっていると考えてもいいでしょう。
年収が高いといっても、労働と収入の釣り合いは取れないところがブラックであるといえます。
人間関係が難しい
施工管理の仕事の多くは、調整役とも言えるいわば板挟みの立場です。
事業主や施主、職人や会社の上司、メーカーや近隣住民など多方面に渡って対応しなければなりません。
そのため、周辺の住民からの騒音に対するクレーム対応に追われたり、施主からの要望で急な設計変更があり職人から反感を買ったり、天候や災害で資材の納期が遅れているのに事業主から工期の短縮を求められるなどさまざまな理不尽に晒されることになります。
こうしたストレスの溜まる人間関係に耐え、円滑に工事を進めていかなければならないため、人間関係の構築は非常に難しく、コミュニケーションの苦手な人には辛い環境となるでしょう。
多くの資格取得を求められる
建設業の多くは専門知識が必要であり、深い知識と経験や技術が求められることが多く存在します。
施工管理の業務は、資格がないと従事できない業務があり、建設現場には有資格者を配置しなければならないといった規定があります。
そのため、多くの会社では業務に関連する国家資格の取得を求められます。
しかし長時間労働の後に、専門的な勉強に取り組まなければならないため、睡眠時間を削る事となり体調を崩しやすくなります。
転勤が多い
施工管理の就業する場所は建設プロジェクトとなるため、現場が引き渡しとなれば次の建設現場に出向く事となります。
そのため、担当するプロジェクトによっては自宅から通勤するのではなく出張や転勤となることもやむを得ません。
勤務する会社の規模が大きいと、手掛ける現場は日本全国に渡ることもあり、全国を転々とする可能性もあります。
場合によっては国内にとどまらず、海外の建設プロジェクトに出張することもあり、長期出張や海外転勤の可能性もあります。
施工管理で働き方改革は進んでいるのか
働き方改革が進んでいる会社もあるが、すべてではない
国土交通省によると、2016年時点では建設業の約65%が4週4休以下で就業している状況でした。
また、4週8休(週休2日)は1割以下であり、非常に低い割合である業界でした。
そのため、地方公共団体にも働きかけ、働き方改革の取り組みが浸透するよう地域発注者協議会の場を活用するなどして週休2日工事の拡大が図られています。
そうした取り組みには、週休2日の確保と共に長時間労働を抑制する目的があります。
また、大手ゼネコンでは既にこのような取り組みを行っており、土曜日及び日曜日の現場閉所を標準工程としています。
また、建設キャリアアップシステムによる、技能者の能力評価制度の活用によって専門技能者の施工能力の見える化など、優良技能者を育てる取り組みも進めています。
一方で、中小企業をはじめ多くの企業がIT化やICT活用に取り組めるよう、実態に即した積算基準に改善し、書類の簡易化などの省力化も進められています。
多くの中小企業では、タブレット端末などを導入しICT技術の活用などに取り組んでいますが、いまだ浸透していない企業も多いといった実態があります。
タブレットやウェアラブル端末を導入しても、ICT技術の浸透スピードが遅いため、活用するフィールドがいまだに狭いといった問題も存在します。
参考:国土交通省|建設業働き方改革加速プログラム
参考:国土交通省|建設業における働き方改革
日給月給の場合、週休2日になると給料が減る可能性がある
週休2日をはじめとした働き方改革が進んでいくデメリットとして、日給月給の給与形態であった場合、休みが増えるほどに給与が低下する事となります。
また、週末現場閉所が進むと土曜日に出勤できなくなるため、日当で働いていた職人なども同様に給与が減る事となります。
施工管理のやりがいとは
自分の携わったプロジェクトが完成した時の達成感
施工管理の仕事や建設業の仕事は、地図に残る仕事と言われます。
自分の仕事が形になり、他の人にも見える形として残るのは、他の仕事では味わえないやりがいがあります。
また、都市部のランドマークなどを手掛けるプロジェクトであった場合などは特にですが、完成した建設物が地図に載るなどしているのを見ると、非常に誇らしい気持ちになります。
こうした仕事の達成感は、苦労がつきまとう施工管理の仕事では非常に大きなやりがいにつながります。
社会や人の役に立っていると実感できる
建設する建物が一般住宅やマンションなどの建設プロジェクトだった場合、自分が携わって建てた建設物で生活している様子を見た際は、誰かの役に立っていると実感できます。
また、公共施設やインフラ工事などの公共工事では、社会に貢献しているという実感を持つ事ができ、とても大きなやりがいを感じられます。
自分の成長を感じる事ができる
施工管理の仕事はとても理不尽な事が多くつきまとう、非常に辛い仕事でもあります。
しかし施工管理の仕事は、一般企業では管理職以上になってからしかできない、管理マネジメントという業務を早い段階で経験できる事にあります。
自分の仕事で手いっぱいな状態では務まらない仕事であるが故に、非常に辛いと感じる業務ではありますが、成長速度は他の産業では考えられない速度で成長することができるのです。
施工管理の経験は転職する際に有利になる
施工管理の仕事では、膨大なタスクをこなしながら管理を行うため、同業他社に転職することはもちろんですが、異業種に転職する際にも有利になります。
それは施工管理の膨大な業務をこなすタスクマネジメント能力や、スケジュール管理能力はさまざまな職種や業界でも重宝されるためです。
ブラックではない環境で働くには
転職エージェントを利用する
ブラックな企業からホワイトな企業に転職するためには、転職エージェントの利用は欠かせないといえるでしょう。
なぜならば、転職エージェントは転職WEBサイトに掲載されていない非公開求人の情報を持っているからです。
転職サイトやWEBに掲載されている求人は公開求人と呼ばれますが、掲載されていない限られた人に向けた非公開の求人があり、当然非公開求人の方がより良い採用条件となっています。
しかし、非公開求人は転職エージェントがマッチングして、紹介してもらわないと応募する事ができません。
ブラックな会社から脱却したいのであれば、複数の転職エージェントに登録し、情報をしっかり精査して慎重に転職を進める事が重要です。
離職率の低い会社を選ぶ
離職率が低い会社であれば、長く働ける環境が整備されている会社である事になります。
定着率が高い企業の多くは研修制度が整備されており、業務の評価制度も整っている可能性が高いです。
意欲的に働く人がしっかり評価されることは、仕事への意欲も高まります。
公共工事の多い会社で働く
民間工事と違い公共工事では、土日祝日は工事を行わないケースがほとんどです。
発注元である役所や自治体が休みであり、工事も行っていない事が多いです。
また、公共工事は入札企業の評価が低いと受注できません。
企業としての評価があり、経営状態が健全で、工事の体制が整っていると判断された企業が受注する事ができるため、公共工事を主体としている企業は、企業体質が健全な可能性が高いです。
IT化を進めている会社を選ぶ
ICT技術の活用やIoT技術を推進している企業では、業務を効率化し残業を軽減しようと考えています。
業務の効率化を図っている企業では、ペーパーレスやIT化を推進している傾向が高く、業務の負担が軽いと考えていいでしょう。
また、IT化を推進し効率化に取り組んでいる企業は、新しい技術を導入する取り組みに積極的である可能性が高く、発展的な社風である企業も多く見られます。
派遣で働く
施工管理の働き方として、派遣として働くという選択肢もあります。
派遣会社の正社員として雇用され、ゼネコンや建設会社の現場で施工管理として働く事になりますので、社会保険や年金制度もしっかりしています。
また、派遣では残業代がしっかり支給されるため、サービス残業となりません。
さらに、派遣会社によっては、自分の希望に合わせた現場を紹介してくれるため、ライフスタイルに合わせた働き方ができる可能性があります。
首都圏ではなく地方で働く
地方都市の建設企業は、地域密着型の営業を行っているケースが多く、ひとつの現場に複数の施工管理が就業する場合があります。
そのため施工管理一人当たりの業務量が少なく、落ち着いて仕事ができる環境となります。
地方では施工管理の人手不足が深刻化しており、地方企業では施工管理が優遇されるケースも珍しくありません。
自分の希望に沿った働き方や年収を獲得できる可能性があります。
小規模な現場で働く
マンションの大規模修繕など、規模のコンパクトな現場をメインで行っている企業では、残業が少なく業務量も少ないため、自由な時間を得られる事が多いです。
また、経年劣化し修繕が必要なマンションは今後増加していく見込みであるため、修繕工事をメインとした小規模案件は需要があります。
施工管理の転職・収入アップ事例
首都圏から地方にUターン|年収550万円→670万円
携わるプロジェクトは大型の民間案件が多く、非常に多忙な毎日で家族や友人との時間はほぼ取れないでいました。
そのことが不満だったKさんは、家族の故郷がある地方へUターンする決意をします。
地方の建設会社では、これまでの経験が大きく評価され、管理職として転職する事になりました。
転職してからは残業時間も大幅に減り、家族との時間が増え、プライベートも充実した生活ができるようになりました。
転職エージェントを利用して大手ゼネコンへ|年収600万円→760万円
人手不足が深刻な会社で、一人当たりの業務量が膨大なため毎日サービス残業をしていました。
そこで、ゼネコンに転職したいと考え転職エージェントに相談しました。
すると取得していた資格や経験から、大手ゼネコンの非公開求人を紹介され、転職する事になりました。
相談した転職エージェントが建設業特化型だったこともあり、条件の良い求人案件を獲得する事ができました。
小規模案件を扱う企業に転職|年収580万円→640万円
そのため業務量は膨大で、毎日深夜まで働いて朝早く出勤し、時には泊まり込んで仕事をしていました。
このままでは身体的にも辛いと考え、転職したいと考えました。
そこで小規模な案件を扱う企業で、マンションの修繕工事などを扱っている企業に転職しました。
これまでの施工管理としてのキャリアや、豊富な知識が認められたこともあり年収も前職よりもアップする結果となりました。
まとめ
施工管理の仕事は業務量も多く、非常に多忙な業務であるかわりに、ほかの仕事では味わう事ができないやりがいがあります。
また、施工管理は早い段階でマネジメント業務に触れる事になり、スキルや経験としても得ることの多い業種です。
自身の環境がブラックであれば、建設業特化型の転職エージェントに相談し、ホワイトな環境で将来のキャリア形成を考えてみてはいかがでしょうか。
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