測量士とは主に建設現場で必要とされる仕事で、建設を行うための位置出しを行います。
現場の面積、起伏、水平垂直の基準を正確に出すことで計画通りの建設が可能となるためその役割は重要です。
測量士になるためには方法が2つあります。
1つ目は土木工学系の大学や専門学校に通ったのちに実務経験を積む方法。
2つ目は国土地理院による測量士・測量士補試験に合格し、測量士として登録手続きを行う方法です。
今回は後者の測量士・測量士補試験の方法について、試験難易度や勉強方法、また測量士になるメリットを解説します。
測量士とは
仕事内容
測量士の仕事内容には大きく2つあります。
外業と内業です。
名前の通り現場など外で行う作業と、事務所などの屋内で行う作業のことで、外業では建設予定地などに向かいオートレベルやトータルステーションと呼ばれる正確に測定を行うことができる精密機器を用いて、測量業務を行います。
内業では外業で実測したデータを基にデータ分析や製図作業、測量計画の作成、その他の事務作業を行います。
製図作業はCADを用いて行われるため、測量士はCADスキルが必須です。
測量士補との違い
測量士の補佐を行う役割を持つ資格である測量士補と呼ばれる仕事があります。
測量士補は測量士が計画した測量計画に基づき、現場での測量業務を行うことが可能になります。
この測量計画に基づかない測量を行うことは出来ず、測量計画は測量士にしか作成することができません。
測量士補は測量士の負担を軽減するための仕事なのです。
測量士 | 測量作業の主任者として、測量計画作成含め、全ての作業を行うことが認められている |
測量士補 | 測量士の補佐として、測量士の作成した測量計画に基づいた測量作業を行うことが認められている |
測量士の難易度は?
合格率の推移
測量士試験の例年の平均合格率は約12%程度となり、かなり低めとなっています。
合格率からすると難易度は比較的高めです。
直近6年分の合格率は以下のとおりです。
測量士試験
実施年 | 受験者数(人) | 合格者(人) | 合格率 |
令和4年度 | 3,194 | 460 | 14.4% |
令和3年度 | 2,773 | 498 | 18.0% |
令和2年度 | 2,276 | 176 | 7.7% |
令和元年度 | 3,232 | 479 | 14.8% |
平成30年度 | 3,345 | 278 | 8.3% |
平成29年度 | 2,989 | 351 | 11.7% |
測量士補との難易度の違い
測量士補試験の例年の平均合格率は約35%となり、測量士試験と比較するとかなり高めの合格率です。
合格率からすると難易度は低めといえるでしょう。
直近6年分の合格率は以下のとおりです。
測量士補試験
実施年 | 受験者数(人) | 合格者(人) | 合格率 |
令和4年度 | 12,556 | 5,540 | 44.1% |
令和3年度 | 12,905 | 4,490 | 34.8% |
令和2年度 | 10,361 | 3,138 | 30.3% |
令和元年度 | 13,764 | 4,924 | 35.8% |
平成30年度 | 13,569 | 4,555 | 33.6% |
平成29年度 | 14,042 | 6,639 | 47.3% |
以上のことから測量士を目指している人は、まずは測量士補の資格を取得し、実務経験を積んだのちに測量士試験を目指すルートが最善といえます。
測量士の難易度が高くなる理由
それではなぜ測量士試験の難易度が高くなるのか、理由を3つほど考えてみましょう。
実務に即した問題が出題される
まず1つは実務に即した問題が出題されるからです。
測量士試験は他の資格試験に比べ、机上論の問題よりも実際の現場条件を考慮した問題など、より実務に即した問題が出題されやすい特徴があります。
そのため、たくさんの知識を身に着けていたとしても、ある程度の実務経験を有していなければ解けない問題が多いことが、難易度を上げているひとつの要因です。
最新の測量技術の知見も必要になる
2つ目は最新の測量技術の知見も必要になるからです。
測量技術は時代とともに変化を続けており、新たなテクノロジーを活用し、これまでより効率的で精密な測量を行うことが求められます。
そのため最新の測量技術について常にアンテナを張り、自身で学んでいかなければならず、過去問や法律、法則などの暗記ばかりの学習を繰り返していては、こういった出題に対する対応ができません。
近年ではドローン測量における高度な問題も出題されています。
数学や地理の応用も必要になる
3つ目は数学や地理の応用も必要になるからです。
測量技術には地理の知識は当然ながら、数学知識も必要です。
測量という学問は数学の上に成り立っているため、数学知識なくして、測量の問題は解けません。
高度な知識までは必要ありませんが、出題から何を応用すれば解くことができるのかを素早く判断できなければ、時間内に終わらせることが難しくなります。
測量士の試験とは
概要
測量士試験は測量法及び測量法施行令に基づいて行われる国家試験です。
測量士となるのに必要な専門的知識及び応用能力を有するかどうかを問われます。
試験は毎年春もしくは秋に1回のみ、全国14の都市で同日におこなわれ、試験に合格することで合格証明書が国土地理院より発行されます。
合格証明書を以て測量士登録手続きを行うことで、測量士となることができます。
試験は午前の部と午後の分にわかれており、午前の部では択一式問題、午後の分では記述式問題が出題されます。
受験資格
測量士試験は年齢、性別、学歴、実務経験等に関係なく受験することができます。
しかし、実務経験がなければ解けない問題も多いことから、実際には未経験で受験をする人はほとんどいません。
試験科目
試験科目は以下の9科目から出題されます。
・測量に関する法規及びこれに関連する国際条約
・多角測量
・汎地球測位システム測量
・水準測量
・地形測量
・写真測量
・地図編集
・応用測量
・地理情報システム(GIS)
また、これら上記に関連した測量業務を行う上での一般的な知識についても出題されますので、実務経験があることで有利となります。
測量士試験の勉強方法
難易度の高い測量士試験ですが、勉強方法次第では有利に進めていくことができます。
勉強方法についていくつか解説します。
過去問ばかりに頼らない
基本知識を身につけるためや出題傾向に慣れる意味でも過去問学習はとても重要です。
しかし、過去問ばかりに頼っていると合格点に達しない可能性があります。
さきほど測量士試験の難易度が高い理由として、最新の測量技術の知見も必要になる旨を述べましたが、最新の測量技術は当然過去問には出題されていません。
現代では、試験日が近くなってくるとインターネットやSNSなどで予想問題や新たな法改正の情報交換が盛んにおこなわれています。
情報収集をすることで、合格の可能性も高まるでしょう。
通信講座を受ける
情報収集する時間がない方や自身で勉強をするモチベーションが保てない人は、通信講座を受講することも検討しましょう。
しっかり学習計画が組まれたカリキュラムに従って、基本学習、模擬試験や添削指導などのサービスがあり、専用の教材も送られてきます。
測量士試験は市販の教材が少なく、専用の教材は大きなメリットです。
費用が掛かってしまうことが難点ですが、受講者の合格率が50%を越える実績を持つ講座などもあり、受講する価値は充分にあります。
測量士のメリットとは
ここでは測量士になるメリットについて触れていきます。
測量は独占業務
測量業務は測量士と測量士補の独占業務です。
簡単な測量業務をおこなうとしても必ず測量士や測量士補の有資格者でなければならず、建設工事などを行う際には必ず測量士が必要ということになります。
また、測量業務を行うための測量計画の作成は測量士のみの独占業務となり、測量士の需要の高さは変わることがなく、今後も仕事がなくなることはないでしょう。
転職に有利
測量士は資格取得難易度が高いことで有資格者が多くないため、測量士の資格は転職時に非常に有利に働くでしょう。
測量業務をおこなう会社は、事業所ごとに測量士の有資格者を配置しなければならないと定められています。
そのため会社は一人でも多くの測量士を採用しようとします。
需要の高い測量士は条件の良い転職も可能となります。
土地家屋調査士とのダブルライセンスで更に活躍の場が広がる
土地家屋調査士とは、不動産登記のための測量を行い図面を作成から不動産に関する登記申請までを行う法務省管轄の法律系の資格です。
測量士と土地家屋調査士の資格は相性が良く、測量士の資格があることで土地家屋調査士試験の測量に関する一部の科目が免除となります。
測量士と土地家屋調査士のダブルライセンスになることで普段の測量業務に加え、不動産登記の仕事までこなせるようになり、活躍の場が更に広がります。
測量士の転職・収入アップ事例
最後に測量士の転職事例や収入アップ事例を3つ紹介します。
測量士資格取得→社内での評価が上がり、収入もアップ!(年収450万円→500万円)
難易度が高いことは分かっていたので、毎日勉強時間を少しでも確保することを心がけました。
勉強の甲斐もあり無事に1回で合格することができ、今では測量士として従事しています。
測量士を取得したことで社内でも頼られることが多くなり、収入も上げることができました。
測量士資格が評価される企業へ転職→やりがいのある仕事ができるように!
入社当初は測量の仕事もあるということで、採用してもらいましたが測量業務はあまりなく、ほとんどが施工管理の仕事ばかりでした。
測量士の資格が宝の持ち腐れになってしまうのは嫌だったので、測量業務をメインに事業を行っている現在の企業へ転職しましたが、今ではとても充実した仕事ができていると思っています。
自分は施工管理ではなく、測量士だと再認識できた転職でした。
土地家屋調査士とのダブルライセンス取得→社内で昇進し、任される仕事も増え収入もアップ!(年収550万円→年収620万円)
測量士だけの頃と比較すると年収は70万円ほど上がってます。
私がダブルライセンスとなったことで、会社としても不動産登記の仕事も取れるようになり、会社に大きく貢献できていると思っています。
おかげで不動産関連の課長に昇進することができました。
まとめ
今回は測量士の資格取得難易度や資格取得のメリットについて解説しました。
測量は建設業界にとって、また現在の地図を後世に残していくためにも重要な仕事です。
測量技術は常にアップデートがなされ、近年ではドローン測量士などの新たな仕事も出てきています。
ますます需要が高まっていくことが予想される測量士ですが、資格取得難易度が高いこともあり、測量士の数は多くありません。
この記事を参考に少しでも測量士に興味を持つ人が増えて頂けると幸いです。
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